Research Abstract |
沿岸地下淡水資源の塩化観測技術である同軸型プローブの適用条件を検討するために,野外観測を模擬した室内実験を実施した.沿岸の地下深部では,海水侵入により淡水と海水の境界面が形成される.したがって,淡塩水境界面の位置(淡塩水境界位)の変動から,海水侵入による淡水の塩化状況を把握できると考え,実験用カラム内に模擬した2つの観測条件でその位置変動を測定し,同プローブの適用条件を検討した.使用したプローブは,全長が67.5cm,内径が3cmのステンレス鋼円筒型外部導体と,その内部に配置されたセンサー部の直径0.5cmのステンレス鋼丸棒とから構成される.実験では,淡水で満たしたカラムの底部から塩水を給排水することによって淡塩水境界位の変化を創出した.第1の条件では,カラム内に砂を充填し,その中央に鉛直にプローブを配置して埋設した.この条件では,実際の野外観測において沿岸の砂層地盤にプローブを直接挿入することを想定し,観測井戸を必要としない場合を模擬した.第2の条件では,カラムを観測井戸と考え,砂を充填しなかった.なお,プローブによる測定値との比較のために,4つの電極を1組とする4極センサーをカラム側面の鉛直方向に多数配置し,同センサーによる電気伝導度(4極法)の鉛直プロファイルに基づいて淡塩水境界位を別途測定した. 実験の結果,第1の条件では境界面の変動速度が大きい場合に,同プローブと4極法に基づく計測値に差異が生じたが,第2の条件では両者はよく一致した.第1の条件における誤差は,円筒状プローブ内部の水の流速がその外側の流速よりも大きくなり,電気伝導度の鉛直プロファイルがプローブ内外で異なったために生じたものと考えられる. 以上の結果から,観測井戸内であれば,開発したプローブで淡塩水境界位の変化を観測でき,同プローブを沿岸地下の淡水資源の塩化監視技術として利用できるものと考えられる.
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