Research Abstract |
本研究は,せん断試験によらずに地すべり土の物理的鉱物学的性質から残留強度φrを推定する方法について検討し,φr推定における有効性とφrを決定づける因子について考察するものである。 地質および土質の異なる多種の地すべり土の採取・収集のため,沖縄県,鹿児島県,宮城県,山口県,オアフ島,スリランカ,中国,米国コロラド州で発生した地すべりについて,事前調査を行って試料の採取・収集の準備を整え,一部については採取・収集を実行した。新たに採取した試料と過去に採取済の試料について,425μmふるい通過試料について定応力リングせん断試験を行い,多段階載荷方式(せん断速度0.01mm/min)によりφrを測定した。また,試料の物理性および鉱物組成の把握のため,土粒子の密度試験(JIS A 1202),粒度試験(JIS A 1204および音波処理反復法),土の液性限界・塑性限界試験(JIS A 1205)等の各種物理試験とX線回折法による鉱物分析を行った。これらの結果を基に,配向性粘土鉱物総量とφrとの関係について整理し,2010 GSA Annual Meeting, Denver, USA (Geological Society of America)にて発表した(2010年11月3日)。この成果により,配向性粘土鉱物総量によりφrを推定する手法の信頼度が高まり,φrを決定づける因子として配向性粘土鉱物が重要であることを明確にできた。また,φrと過圧密比の関係について整理した論文をEngineering Geology誌に投稿中である。この成果は,過圧密状態における土構造がφrの発現に与える影響を検討したもので,φrを決定づける因子の明確化に繋がるものである。一方,EGME(エチレングリコールモノエチルエーテル)による有機極性液体吸着法による試料の比表面積を進めており,23年度に発表予定である。
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