2011 Fiscal Year Annual Research Report
農耕地の余剰窒素が環境にどの程度の負のインパクトを与えるのか?
Project/Area Number |
22780224
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
遠藤 明 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (70450278)
|
Keywords | 農耕地 / 硝酸態窒素 / 浸透流出量の算定 / 環境影響評価 |
Research Abstract |
本研究の目的は、農耕地の余剰窒素が環境にどの程度の負のインパクトを与えるのかを、明らかにすることにある。本年度は、青森県藤崎町のリンゴ園(灰色低地土農耕地)において、1年間の無機態窒素の浸透流出量を算定することを目的に、Endo et al.(2009)の農地土壌中の窒素輸送に関する数理モデルを用い、農耕地中の1年間の無機態窒素濃度の時空間的変動を把握した。当該リンゴ園は15年以上、化学肥料・堆肥を施用していないが、圃場を白クローバー(窒素固定量N_<fix>=50~150[kgN ha^<-1>])で覆い土壌に窒素供給を行っている。このようなリンゴ園において採取した土壌の理工学的性質に関する各種室内試験を行い、数理モデルに入力する諸パラメータ(土壌の透水性・保水性・熱物性・無機態窒素の吸着特性等)を同定した。また、可分解性有機態窒素量と無機化速度定数から温度換算日数(DTS)を算出したところ、本圃場の1年間の地力窒素発現量N_<mine>は84[kgN ha^<-1>]であった。そして、肥料由来の窒素施肥量N_<app>=0[kgN ha^<-1>]・窒素固定量N_<fix>、および地力窒素発現量N_<mine>のパラメータを用い、当該リンゴ園の無機態窒素濃度の時空間的変動を把握し、無機態窒素の浸透流出量を算定した。当該リンゴ園の表層土壌間隙水中のアンモニウム態窒素濃度は8月中旬~下旬に最も高かった。一方、硝酸態窒素濃度は9月初旬~中旬で最も高く、日降水量80mm程度の降水により、硝酸態窒素が深度約50cmまで一気に浸透流出した。この高濃度の硝酸態窒素を含む間隙水は、年明け後に約6.7(cm/month^<-1>)のほぼ一定の速度で深度1mまで降下浸透する傾向にあった。深度1mでの1年間の硝酸態窒素の浸透流出量は、窒素固定量N_<fix>=50、100、150[kgN ha^<-1>]でそれぞれ27、68、104[kgN ha^<-1>]であり、無肥料の農耕地においても農耕地が窒素過剰の状態になることが示唆された。
|