2010 Fiscal Year Annual Research Report
ストロンチウム安定同位体と元素分析による灌漑農地の塩分起源の同定
Project/Area Number |
22780225
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
久米 崇 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 特任准教授 (80390714)
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Keywords | ストロンチウム / 微量元素分析 / 乾燥地 / 灌漑農地 / 土壌塩性化 / 塩分起源 / トレーサー / 安定同位体 |
Research Abstract |
本研究は、乾燥地の灌漑農地において、土壌塩性化の改良・防止および農業排水による環境負荷の削減に向けて塩分の起源を考慮した塩分管理手法を策定するための基礎研究である。具体的な目的は、高塩分濃度の農業排水再利用が行われ土壌塩性化が発生している地域を対象として、ストロンチウム安定同位体と元素濃度の組み合わせにより塩分の起源を同定することである。塩分起源の同定とは、塩分の構成要素について定性的かつ定量的に明らかにすることを意味する。 平成22年度の計画は、1.現地研究者・研究機関との打合せ、試料のサンプリング、2.同位対比と元素濃度測定、3.データ解析(構成要素とトレーサーの検討)である。まず1.については、これまでの研究協力関係者と研究計画について協議し、従来より研究を進めてきた方法で継続的に試料のサンプリングを実施していくことで合意した。次に、2.については、サンプリングデータの分析を実施し、3.のデータ解析につなげることができた。 データ解析の結果、ストロンチウム安定同位体比(^<87>Sr/^<86>Sr)とNa/Sr、Ca/Sr(イオン比)を用いることで排水における塩分に関し、土粒子表面での吸脱着反応プロセスを考慮すると、ナトリウムとカルシウムのそれぞれの起源を定性的かつ定量的に分析することができる見通しがついた。この結果は、従来までのトリリニアダイアグラム等によるイオン構成比による塩分起源の分析に対して、同位体を用いた物質起源を同定する手法を用いたことで、より科学的に精度の高い分析を可能にするものである。
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