2011 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ指紋スペクトルを用いた農産物および食品の品質評価法の開発
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22780227
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 茂昭 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80410223)
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Keywords | 農産物 / 品質評価 / 高圧処理 / ダイズ / グルタミン酸 / γーアミノ酪酸 / グルタミン酸脱炭酸酵素 |
Research Abstract |
テラヘルツ分光を用いた農産物および食品の品質評価法の開発に際し,農産物を高付加価値化しうる高圧処理に関する基礎データの集積を行った.特に本研究では,グルタミン酸(Glu)からGABAへの反応を触媒するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)に着目し,高圧処理によるGAD活性およびGluの内部拡散に及ぼす影響を,反応工学的に解析することにより,高圧処理ダイズのGABA生成メカニズムを検討した.高圧処理ダイズのGAD活性は、処理直後および処理後2日保存のいずれにおいても、粗抽出液中に活性が認められたが、高圧処理による顕著な活性の上昇は認められなかった。種皮と子葉とでは拡散・透過挙動が同じではないと考えられたので、子葉部分を用いて拡散実験を行ったところ、拡散モデルで記述することができ、Gluの拡散係数はおおむね10-10m2/s程度の値となった。ダイズ内部ではGABA生成反応と拡散が同時進行していると考えられたため、反応工学的パラメータであるThiele数および触媒有効係数、GABA変換率の推算を試みた。その結果、高圧処理ダイズではGADによるGABA生成反応が効率的であることが示唆された。また、初期Glu濃度が高いほどGluのGABAへの変換率が低くなったことから、GABA生成は拡散律速であることが示唆された。以上の結果より、高圧処理ダイズにおけるGABA生成では、酵素活性は低下するが細胞損傷によりGlu拡散が容易となるので、Gluがダイズ内部まで行き渡ることでGABA生成が促進したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ分光を用いた農産物および食品の品質評価法の開発に際し,農産物を高付加価値化しうる高圧処理に関する基礎データの集積を行った.特に本研究では,グルタミン酸(Glu)からGABAへの反応を触媒するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)に着目し,高圧処理によるGAD活性およびGluの内部拡散に及ぼす影響を,反応工学的に解析することにより,高圧処理ダイズのGABA生成メカニズムを検討できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
テラヘルツ分光装置は高価,計測に熟練の技術が必要であり,さらに装置が大型であることから,農産加工流通の現場における適用例は皆無である.現時点では,装置の小型化が十分に進展しているとはいえない為,今後は小型化,汎用化を含めた装置の開発が急務であると考える.
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