2011 Fiscal Year Annual Research Report
反すう家畜の代謝障害予防をめざしたアシドーシス誘発高リスク菌株の特定
Project/Area Number |
22780238
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 聡 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (90431353)
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Keywords | ルーメンアシドーシス / Streptococcus bovis |
Research Abstract |
乳肉牛生産に大きな損失をあたえるルーメンアシドーシスを予防するために、濃厚飼料を多給した際のルーメン菌叢変化について、とくにアシドーシス起因菌として知られるStreptococcus bovisに着目して基礎知的知見を取得した。前年度の試験でルーメン内には遺伝子型や生理機能が異なる様々なS.bovis菌株が存在することを明らかにした。それを受け、今年度の試験では飼料中の粗飼料/濃厚飼料比(粗濃比)を変えた際のS.bovis菌株多様性変化をモニターした。粗濃比8:2、5:5および2:8で飼養したヒツジルーメンより、S.bovis菌株を85菌株(それぞれの飼料条件より25-30菌株ずつ)分離し、PCRゲノムフィンガープリンティングによる分類を実施した。その結果、濃厚飼料多給に伴いゲノムフィンガープリントパターンは減少し、濃厚飼料多給時には特定のS.bovis菌株が優勢となることを明らかにした。 濃厚飼料を多給すると過去の報告通り、S.bovisのルーメン内密度が増加し(約10倍)、ルーメン内の乳酸蓄積とpH低下も見られた。しかし、これらのパラメータ変化には個体差が見られた。供試した3頭のヒツジのうち1頭(個体B)で特に顕著な乳酸蓄積とS.bovisの増加が見られた。変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法で飼料変化に伴う総細菌叢の変動をモニターした結果、濃厚飼料多給時には個体Bのみ他の個体とは明確に異なる菌叢を示した。主要細菌についてreal-time PCR定量を行ったところ、他の個体に比べて個体BではPrevotella属細菌の分布量が多く、Selenomonas ruminantiumが少ないことが明らかとなった。Prevotella属細菌は多様な機能を有する細菌種で構成されるが、中には乳酸を産生する菌株も存在する。一方、S.ruminatiumは乳酸利用菌として知られている。したがって、個体Bでは乳酸産生菌と乳酸利用菌のバランスが他のヒツジと異なり、それが乳酸蓄積とpH低下を招いた可能性が考えられた。
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Research Products
(2 results)