2011 Fiscal Year Annual Research Report
LCAを用いた肉用種繁殖牛の放牧新技術に関する環境影響評価
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22780247
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
堤 道生 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター・畜産草地・鳥獣害研究領域, 主任研究員 (70373248)
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Keywords | 環境 / 畜産学 / 草地学 / LCA |
Research Abstract |
農林業センサスデータを用いて、中国地域における周年放牧飼養体系導入の可能性を解析した。すべての繁殖和牛を耕作放棄地(春~初秋の6ヶ月間;野草地含む)および再生イネ(その後2ヶ月)で放牧飼養する場合、各市区町村内から移動が必要な牛の割合は、8.9%であった。同様に、耕作放棄地および水田裏作で冬季放牧を行う場合、45.3%の牛を移動させる必要があるが、各県内で飼養可能と推定された。本推定は農林業センサス2005に基づいており、最新のデータである農林業センサス2010で再度推定を行う必要がある。 6戸の和牛繁殖農家へのアンケートをもとに、出荷される子牛1頭あたりの環境影響評価を行った。舎飼いのみのA牧場と比較して、B牧場を除いた放牧導入農家で環境負荷が低く算出された(地球温暖化17%~22%、酸性化10%~27%、富栄養化9%~25%、エネルギー消費17%~38%)。B牧場は周年放牧を行っているが、冬季の粗飼料の多くを輸入乾草に依存することなどから環境負荷が大きくなっていた。舎飼いのみのC牧場は、繁殖牛の粗飼料が自家生産の稲ワラであることや給餌量が少ないことにより、環境負荷が放牧導入農家と同等あるいは低かった。本解析の後さらに6戸に聞き取りを行い、前述の6戸に加え計12戸の和牛繁殖農家(放牧あり5戸、放牧なし7戸、1戸の一貫経営を含む)について、繁殖牛の分娩間隔および産子数のデータを放牧導入・非導入の農家間で比較した。その結果、分娩間隔では放牧導入(平均385日)と非導入(平均392日)で有意な差はなかったが、産子数は放牧導入(平均11.9頭)で非導入(平均10.0頭)より有意に多く(P<0.05)、放牧導入による繁殖性改善効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で示した工程、LCA手法を用いた環境影響評価モデルのインベントリ構築、耕作放棄地の牧養力調査、耕作放棄地放牧下での分娩間隔の調査などを計画通り行っており、目的達成に向け研究が順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に、ひごばえ(再生イネ)生産量の調査を平成24年度まで行うと記したが、(1)データをある程度蓄積したこと、および(2)先行研究(日本草地学会誌57巻別号p33)が発表されたことを考慮し、本調査を平成24年度には行わないこととした。この他の調査・解析については当初の計画通り実行する。研究実績の概要に記したように、前年度入手した6戸の和牛繁殖農家の飼養データに加えて、さらに6戸の和牛繁殖農家のデータを2012年2月に入手した。このデータの解析を速やかに行い、放牧導入農家と非導入農家それぞれの平均的な環境影響を評価・比較し、発表したい。
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Research Products
(1 results)