2010 Fiscal Year Annual Research Report
マイナス鎖RNAウイルスの自然免疫回避戦略におけるヌクレオカプシド蛋白質の役割
Project/Area Number |
22780261
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 直人 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20334922)
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Keywords | 狂犬病ウイルス / マイナス鎖RNAウイルス / ヌクレオカプシド / 自然免疫 / インターフェロン / RIG-I |
Research Abstract |
弱毒の狂犬病ウイルスNi-CE株と比較した場合、強毒のキメラウイルスCE(NiN)株は、RIG-I活性化を回避する性質を持つ。両株はN遺伝子を除く全ゲノム領域が同一であることから、N蛋白質がRIG-I活性化回避能を決定することがわかっている。この分子機序を解明することが本研究の目的である。H22年度は、Ni-CE株を用いて、マイナス鎖RNAウイルス感染細胞におけるRIG-I標的RNAを同定することを計画していた。しかし、最近の研究の進展により、様々なウイルスのゲノムRNAならびに複製干渉RNAの両者がRIG-Iにより認識されることが明らかとなった。そこで計画を修正し、次年度に計画されていた狂犬病ウイルスN蛋白質によるRIG-I活性化回避の分子機序の解明を実施した。 リアルタイムRT-PCRを用いて、Ni-CE株及びCE(NiN)株感染細胞の間で、RIG-Iの標的となるゲノムRNAの量を比較した結果、両者に有意な差は認められなかった(Masatani et al., J.Virol., 2010)。また、RIG-I活性化に重要な2本鎖構造を持つRNA(dsRNA)を免疫染色により検出した結果、両株感染細胞の間でシグナル強度及び分布に顕著な違いは認められなかった。さらに、両株感染細胞から抽出された総RNAを培養神経細胞に導入した結果、Ni-CE株由来のRNAよりも、むしろCE(NiN)株由来RNAのほうが強くインターフェロンβ・プロモーターの活性を上昇させることがわかった。以上の成績より、Ni-CE株及びCE(NiN)株のRIG-I活性化回避能の違いには、RIG-I標的RNAの量ではなく、その構造が関与することが強く示唆された。 本年度は、狂犬病ウイルスN蛋白質によるRIG-Iの活性化回避に、同蛋白質273及び394位のアミノ酸が重要であることを明らかにすることができた(Masatani et al., Virus Res.,2011)。この成績は、ヌクレオカプシド蛋白質による自然免疫回避の機序解明に重要な知見となる。
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Research Products
(3 results)