2010 Fiscal Year Annual Research Report
黄体のGnRHによる黄体退行機序の解明とこれを利用した黄体の寿命の人為的調節
Project/Area Number |
22780263
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
米澤 智洋 北里大学, 獣医学部, 講師 (10433715)
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Keywords | ゴナドトロピン放出ホルモン / アネキシン5 / 黄体退行 / メタスチン / アポトーシス / 卵巣 / 性周期 / エストロジェン |
Research Abstract |
黄体の機能化不全や退行遅延による繁殖障害の改善にむけて、研究代表者はラットをモデル動物にして研究を行っている。ラットでは、黄体形成から3日目にあたる発情休止期2日目(D2)の午前までに、プロラクチン(PRL)の刺激があれば黄体は機能化するが、それ以降にPRL刺激があったとしても速やかに退行することが知られている。しかし、この変化が何によってもたらされているのかはわかっていない。 本年度は、黄体局所に発現するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)がPRLの黄体機能化作用に及ぼす影響について検討した。D2午前の卵巣から摘出した黄体を用いて器官培養を行った。GnRHのアゴニスト(GnRHa)もしくはアンタゴニスト(Cetrorelix)を前処理したうえでPRLを加え、48時間後に黄体および培養上清を採取した。Cetrorelixを前処置した場合、PRLの添加によって、黄体組織中のプロジェステロン産生酵素転写活性と培養上清中のプロジェステロン濃度が増加し、アポトーシスシグナルであるBaxおよびCleaved caspase 3のタンパク質発現が減少した。しかし、GnRHaを前処置した場合には、それらの変化はどれも消失した。次に、浸透圧ミニポンプを用いて、成熟雌ラットの卵巣嚢内にGnRHaを連続的に投与した。このラットに、D2の午前からPRLを1日2回投与して、その後の血中プロジェステロン濃度を測定したところ、PRL投与2日目以降に本来みられるプロジェステロン分泌の増加が観察されなかった。 以上の結果より、ラット性周期黄体においてGnRHは黄体に直接作用し、PRLの黄体機能化作用を抑制することが明らかになった。来年度は、本研究で明らかになった機構を利用した黄体の寿命の人為的な制御に挑戦し、卵巣周期不順の治療法確立につなげる。
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