2011 Fiscal Year Annual Research Report
牛ウイルス性下痢ウイルスの持続感染に係わるウイルス間相互反応と自然免疫制御の解明
Project/Area Number |
22780265
|
Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
青木 博史 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (10440067)
|
Keywords | 牛ウイルス性下痢ウイルス / 持続感染 / 自然免疫 / 同種干渉 / ペスチウイルス |
Research Abstract |
同一株内に混在する生物性状の異なる牛ウイルス性下痢ウイルス(準種)は、宿主の自然免疫能に及ぼす影響がそれぞれ相反するため(平成22年度本研究成果)、株内の準種の共存とその動態が本疾病の持続感染や病態多様性に関与すると推定される。そこで、生物性状の異なる準種が培養細胞に共感染または重感染したときの抗ウイルス作用関連因子Mx-1のmRNAを測定し、ウイルス準種間相互反応を解析した。E^+ウイルスに様々な比でE^-ウイルスを混ぜ、MOI=2以上で培養細胞に共感染させ、Mx-1のmRNAを定量したところ、ある一定量のE^-ウイルスが含まれるとMx-1が発現するが、両ウイルス間で100倍以上の量的な差があると、Mx-1のmRNAが検出できなくなった。従って、自然免疫制御能が相反するウイルスが共存する場合、その混在割合によって培養細胞の抗ウイルス作用が大きく変動すると考えられた。次に、E^+ウイルスまたはE^-ウイルス感染細胞に細胞病原性(CP)ウイルスを重感染させ、細胞変性効果(CPE)有無とMx-1のmRNA定量を実施したところ、いずれもCPウイルスによるCPEは抑制されたが、前者では細胞病原性ウイルスによる自然免疫の誘導が、後者ではE^-ウイルスによる自然免疫誘導能のわずかな低下が確認された。従って、生物現象を指標とした干渉は成立しているものの、重感染ウイルス由来の自然免疫制御能が発揮あるいは影響を受けている可能性があり、準種の混在が細胞の抗ウイルス作用に与える影響は多様である可能性が示唆された。 同種干渉時の各準種の複製状況を知るため、ウイルス遺伝子型を識別可能な定量的RT-PCR法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同一株内に生物性状の異なる同種ウイルスが混在したときの抗ウイルス作用の変動が明らかになり、ウイルス間相互反応と自然免疫制御の関連性が明らかになりつつある。また、同種ウイルス干渉時の各ウイルスの複製状況を知るために各ウイルスRNAを識別可能な定量的RT-PCRを確立したことから、細胞内のウイルス複製パタンと自然免疫制御機構の相関解析が可能となり、より詳細なウイルス間の相互干渉の分子メカニズムの解析が可能となっており、おおむね当初計画通りに進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に確立した重感染させた準種のRNAを識別する定量的RT-PCRを用いて、同種干渉時に細胞内に共存する各ウイルスの複製量を調べるとともに、抗ウイルス作用関連因子のmRNAの動態、分泌された1型IFNの定量と併せて総合的に解析し、当初計画とおり本ウイルスの持続感染および宿主に及ぼす影響をより詳細に解析する予定である。また、平成24年度にリバースジェネティクス法を用いたウイルス作成を重点的に実施し、持続感染あるいは干渉現象や自然免疫制御に関与する遺伝子領域の特定、株内ウイルス構成が宿主細胞に及ぼす影響の解析に展開する。
|
Research Products
(5 results)