2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22780267
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
原 健士朗 基礎生物学研究所, 生殖細胞研究部門, 助教 (60551546)
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Keywords | 精巣 / 未分化型精原細胞 / 精子形成幹細胞 |
Research Abstract |
本研究は、精子形成幹細胞の特定を目指して、幹細胞の最有力候補と考えられるGFRα1を発現するAsingle型精原細胞(As)の挙動に着目した。古典的にAsは2つのパターンの分裂を行うと考えられている。一つ目は分裂後に2個の新しいAsが生まれる分裂、そして2つ目は分裂後に生まれた2個の細胞が細い細胞間橋でつながったApaired型精原細胞(Apr)になる分裂である。前者は、一般的に精子形成幹細胞の「自己複製」、そして後者は一方向的な「分化」を意味すると考えられている。この記載が正しい場合、定常状態においては、理論上これらの2つの現象は頻度が同じであり(細胞死がない場合)、このつり合いによってAsの数が一定に保たれているはずである。しかしながら実際のところ、これらの分裂現象はその頻度はおろか、本当に生体内で起こっているか否かについても全く不明である。この課題の検証には、時間を超えてAsの細胞系譜を追う実験系の開発が必須であると考え、本年度では、まず精巣におけるGFRα1発現細胞のライブイメージング技術を確立した。具体的には、GFRα1発現細胞をGFP標識する蛍光マウス(免疫組織化学法により全てのGFRα1発現細胞を蛍光標識していることを確認したもの)を用いて蛍光顕微鏡下でAsの生体内での挙動を追跡する系を立ち上げた。同系で取得した画像データについては、PCに取り込んで映像化および映像解析を行い、細胞系譜の定量的データを取得した。次に、確立した実験・解析系を用いてAsの分裂後の細胞系譜を追跡した。その結果、観察したAsの分裂は、95%以上がAs⇒Aprであった。この結果は、従来「自己複製」と考えられていたAs⇒2×Asが実際にはほとんど起こっていないこと、さらには既存の概念以外にAsを維持するメカニズムが存在する可能性を強く示唆するものである。
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