2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性糸状菌が生産するセルラーゼの耐塩・耐熱性機構の解明
Project/Area Number |
22780289
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
水野 正浩 信州大学, 工学部, 助教 (60432168)
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Keywords | Pestalotiopsis / セルラーゼ / 好塩性 |
Research Abstract |
海洋性糸状菌の一種であるPestalotiopsis sp.AN-7は、セルロースを含む培地で培養すると数種類のセルロース分解酵素を分泌する。本研究では、好塩性及び耐熱性を有するβ-1,4-エンドグルカナーゼ(Cel5A)について着目し、その機構をタンパク質の立体構造的観点から解明することを目的とした。本酵素を麹菌にて組換え発現させたCel5Aを精製後、結晶化条件の検討を行った結果、2-propanolを沈殿剤とする条件において針状の微結晶が得られた。しかし、X線回折強度測定に供することが可能な結晶の作製には至っておらず、更なる条件の最適化を続ける必要がある。本酵素の至適反応条件はpH4.0、55℃であり、至適pHにおける温度安定性は、60℃で30分の熱処理によってほぼ失活する。しかし、pH6.0において熱処理を行うと、90℃で60分処理後の残存活性は50%であり、80℃で120分の処理後の残存活性は60%であった。Cel5Aの至適温度は55℃であることから、本酵素は熱によって変性するものの、冷却に伴って巻き戻りを起こす能力が高いことが示唆された。本酵素の一次構造を基に立体構造のモデル予測を行い、好熱性糸状菌Thermoascus aurantiacus及び中温性菌Trichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼとの立体構造と比較すると、Cel5AやT.aurantiacuのエンドグルカナーゼは、(β/α)_8構造のループ領域が短いことや、タンパク質表面に荷電アミノ酸が多いことが明らかとなった。こうした、荷電アミノ酸の配置が本酵素の好塩性や巻き戻り能力、または、結晶化を妨げる要因になっているのではないかと推測される。また、本菌の培養液からはCel5Aのみならず、複数のエキソ型のセルラーゼやβ-グルコシダーゼなどのセルロース分解酵素も新たに見出すことができた。
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