2011 Fiscal Year Annual Research Report
カドミウム低吸収ダイズのカドミウム吸収・蓄積と吸水機能の関係解明
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22780297
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Research Institution | Akita Prefectural Agriculture, Forestry and Fisheries Research Center |
Principal Investigator |
松波 寿典 秋田県農林水産部(農業試験場), 農業試験場・作物部, 研究員 (10506934)
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Keywords | 有害化学物質 / 環境調和型農林水産 / 農林水産物 / カドミウム低吸収ダイズ |
Research Abstract |
ダイズ製品は、わが国では主要な食品であり、日本人が摂取するカドミウム量のうち約10%はダイズ製品由来とされ、ダイズのカドミウム濃度は消費者の関心も高い。しかし、主要作物のCODEX基準値案に対する超過率はダイズが他の作物に比べて極めて高い水準にあり、食の安全が懸念されている現状では、ダイズのカドミウム吸収低減技術の開発は急務である。 本研究では、0.6ppmと1.0ppmのカドミウム人工汚染圃場においてカドミウム低吸収ダイズのカドミウム吸収・蓄積特性を調査し、カドミウムの吸収が盛んな時期とカドミウムを子実に蓄積しやすい時期について検討した。当初の計画どおり、2ヶ年の結果から、カドミウム低吸収ダイズでは、全ての供試品種・系統ともカドミウム吸収量は成熟に向かい直線的に増加し、R3期からR4期にかけてカドミウム吸収量が多くなる傾向がみられた。また、カドミウムの子実への分配率はR4期からR5期、R6期から成熟期にかけて高くなる傾向がみられた。また、本研究で供試した品種・系統のなかで東北地域の代表的な品種であるリュウホウよりも子実中カドミウム濃度は低く、1.0ppmの人工汚染圃場においても子実中カドミウム濃度がCODEX基準値案とされている0.5ppm以下を示し、収量性、品質ともリュウホウより優れる系統が見いだされた。次年度は、当初の予定どおり、実用形質を備え、有望と判断されたカドミウム低吸収系統のカドミウム吸収と吸水機能の関係について明らかにする。また、有望と判断されたカドミウム低吸収系統の実用化に向けた栽培試験を同時に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2ヶ年の経年的データから実用形質を備え、有望と判断されたカドミウム低吸収系統ダイズが見いだされ、最終年度に向けた実験材料の絞り込みが出来た。また、カドミウムを吸収・蓄積し易い時期についても明らかにできたことから、最終年度の試験は当初の予定どおり実施することが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、実用形質を備え、有望と判断されたカドミウム低吸収系統ダイズが見いだされたことから、今後は本系統の低吸収ポテンシャルを明らかにするとともに、それに関わる生理機構についての知見を収集することが、さらなるカドミウム低吸収系統の作出に結びつくと考えられる。また、本研究の経年的な圃場試験のデータより、カドミウム吸収量の年次変動が明らかになった。したがって、今後はカドミウム吸収に影響を及ぼす気象要因(気温、降水量、日射量)を解析することで、カドミウム低吸収に関わる生理機構と物理的環境要因の関係について考察することができ、カドミウム低吸収の遺伝子型と環境との相互作用についての理解が深まると考える。
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