2010 Fiscal Year Annual Research Report
MAPキナーゼ経路によるマウス未受精卵の分裂停止のメカニズム
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22780299
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
兼森 芳紀 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (40529088)
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Keywords | マウス / 減数分裂 / シグナル伝達 / MAPK / 卵子 |
Research Abstract |
本研究は、マウス未受精卵での第二減数分裂中期(Meta-II)停止を誘起する新規分子経路を明らかにすることを目的としている。平成22年度は、アフリカツメガエル卵でのこれまでの知見をもとに、MAPキナーゼ(MAPK)下流因子であるMSKキナーゼた着目し解析を進め、以下の成果を得た。 MSKにはMSK1とMSK2のアイソフォームがあり、それらのmRNAはマウスの組織で遍在的に発現している。卵核胞(GV)期卵とMeta-II停止卵でMsk1とMsk2の発現を調べたところ、両方の卵でMSK1のみが発現していた。免疫染色の結果から、MSK1はGV期卵とMeta-II停止卵でそれぞれGVと細胞質に存在することや、リン酸化(活性化)されたMSK1はMeta-II停止卵の紡錘体付近に局在することが観察された。したがって、マウス卵ではMSK1が発現・機能していることが示唆された。次いで、MSK1のMeta-II停止での役割を調べるために、MSKの特異的阻害剤を用いてMeta-II停止卵の培養実験を行った。その結果、培養時間の経過とともに染色体の分離や紡錘体の消失が見られ、MSKの活性がMeta-II停止の維持に必要であることが示唆された。ツメガエル卵では、MSK類似タンパク質のRSKがEmi2のSer335、Thr336、Ser342、およびSer344をリン酸化することでMeta-II停止を引き起こす。この4個のアミノ酸は種間で高度に保存されており、マウスEMI2ではそれぞれSer326、Thr327、Ser333、およびThr335に相当する。今後は、MSK1がEMI2の該当アミノ酸をリン酸化するか否かを検証する予定である。最終的には、マウス卵でMSK1がRSKに代わり、あるいは協調的にEMI2をリン酸化し、Meta-II停止を誘起するモデルを提唱したい。
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