2011 Fiscal Year Annual Research Report
MAPキナーゼ経路によるマウス未受精卵の分裂停止のメカニズム
Project/Area Number |
22780299
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
兼森 芳紀 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40529088)
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Keywords | マウス / 減数分裂 / シグナル伝達 / MAPキナーゼ / 卵子 |
Research Abstract |
本研究課題は、マウス未受精卵での第二減数分裂中期(Meta-11)停止を誘起する新規分子経路を明らかにすることを目的とした。平成22年度は、アフリカツメガエル卵でのこれまでの知見をもとにMAPキナーゼ(MAPK)下流因子であるMSKキナーゼに着目し解析を進め、マウス卵ではMSK1が細胞周期因子EMI2をリン酸化しMeta-11停止に関与していることを見出した。そこで、平成23年度はMSK1とEMI2のより詳細な関係性(分子メカニズム)について調べ、以下の研究成果をあげた(Yu Miyagaki et al.,2011,Developmental Biology)。 まず、MSK1がEMI2のどのアミノ酸をリン酸化するかを調べた。ツメガエル卵では、MSK類似タンパク質のRSKがEmi2のSer335、Thr336、Ser342、およびSer344をリン酸化することでMeta-II停止を引き起こす。この4つのアミノ酸は種間で高度に保存されており、マウスEMI2ではそれぞれSer326、Thr327、Ser333、およびThr335に相当する。これらのアミノ酸に変異を入れ、in vitoでキナーゼアッセイを行った結果、EMI2内の上記4つのアミノ酸がMSK1によりリン酸化された。さらに、それぞれのアミノ酸を特異的に認識するリン酸化抗体を作製したところ、マウス卵内でのEMI2のリン酸化が確認された。重要なことに、マウス卵をMSK1の阻害剤H89で処理すると、EMI2のリン酸化が時間の経過とともに減少していった。これらのことから、マウス卵でMSK1がRSKに代わり、あるいは協調的にEMI2をリン酸化し、Meta-II停止を誘起するモデルが提唱された。本研究成果により、マウスとツメガエル種間での減数分裂の分子メカニズムの差異が示唆され、今後の農学や医学での応用研究に役立つことが期待される。
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