Research Abstract |
本年度は,昨年度までに合成に成功したエポキシシランを有するイミニウム塩の脱プロトン化反応を詳細に検討した.その結果,ジエチルエーテルとジクロロメタンの混合溶媒中・嵩高い強塩基であるLTMP(リチウムテトラメチルピペリジド)で処理した場合に,目的の脱プロトン化/エポキシシラン転位が進行した成績体であるエノールシリルエーテルを含む化合物が主成績体として得られた.この結果から,イミニウムイオンの脱プロトン化によりカルベンを発生させることが可能なことが示唆されたため,現在,発生したカルベンをアクリル酸エチルなどの反応剤で捕捉することを検討している.LTMPよりも立体的に混んでいないLDA(リチウムジイソプロピルアミド)などを用いるとアルデヒドが主成績体となるため,ある程度立体的に嵩高い塩基を用いなければ,塩基がイミニウムイオンに付加すると考えられる. 次に,より脱プロトン化を容易にするため,エポキシドとイミニウム塩の間に二重結合を導入した基質の合成を検討した結果,アルデヒドとt-ブチルアミンを反応させた後,メチルトリフレートで処理することにより,窒素上にt-ブチル基とメチル基を有するイミニウム塩を合成することができた.これをTHF中,LTMPで処理すると目的のジエノールシリルエーテルを含む化合物が得られたが,主成績体はアルデヒドであった.現在さらに条件を検討中である. また,脱プロトン化ではなく,スズ・リチウム交換によりアニオンを発生させようと考え,プロトンのかわりにスズ置換基を有する基質の合成を検討したが,これは現在のところ成功していない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにほとんど例のない,鎖状イミニウム塩の脱プロトン化によるカルベンの発生が可能であるとの結果が得られたので,一定の成果は上がっているといえる.収率の向上,合成反応への展開などが今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までは,エポキシシランを有するイミニウム塩の脱プロトン化によりカルベンを発生させることのみを目的に研究を行ってきたが,反応系がやや複雑であるので,今後はそれと平行して,シリル基のかわりにアルキル基などを持つエポキシシランを用いた反応なども検討する予定である。これにより,反応の基礎的な情報が得られるとともに,エポキシドが開環することによって生成するアルコキシドが分子内でケテンイミニウム部を攻撃するなど,新たな形式の反応の開発にもつながると考えている.
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