2011 Fiscal Year Annual Research Report
高配位ケイ素を基盤とする高活性ケイ素試薬の開発とその触媒反応への応用
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22790014
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小谷 俊介 熊本大学, 大学院・先導機構, 特任助教 (50551280)
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Keywords | 有機化学 / 創薬科学 / 不斉合成 / 有機分子触媒 / 薬学 |
Research Abstract |
申請者は、平成22年度から継続して、高配位ケイ素と有機分子触媒による不斉反応の開発を行った。平成22年度、申請者は、新たなケイ素試薬であるトリクロロシリルトリフラートがケトンとアルデヒド間の直接的アルドール反応を高立体選択的に促進することがわかった。本反応では、ケイ素化合物ならびに塩基によりケトンから生じたトリクロロシリルエノールエーテルがアルデヒドと反応することで結合形成反応が進行する。反応の基盤となるのは、中間体であるトリクロロシリルエノールエーテルであるが、この手法を含めて既存の生成法は依然として限定的であり、新たな手法の開発が適用系拡張に向けた直裁的な糸口になると考えた。そこで、平成23年度では、塩化ケイ素化合物および有機分子触媒を利用した新たな基質の活性化法の開発を研究の主目的として、種々検討を行った。トリクロロシリルエノールエーテルの新たな生成法として、有機分子により活性化を受けた四塩化ケイ素から生じる塩化物イオンの高い求核性の利用を考えた。実際に、フェニルビニルケトンに四塩化ケイ素を作用させると、良好な化学収率にてβ-クロロ付加体が得られることがわかった。本結果は、塩化物イオンが効率的にビニルケトンに付加し、その中間体としてβ-クロロシリルエノールエーテルが生成していることを示唆している。そこで、不斉反応へと拡張すべく、キラルな有機分子触媒存在下、この中間体にアルデヒドを作用させたところ、高収率かつ高立体選択的にBaylis-Hillman付加体を得ることに成功した。 本結果は、有機分子によって求核性が高まった塩化物イオンの求核性を利用した新たな基質の活性化法であるとともに、効率的なβ-クロロシリルエノールエーテルの生成法である。今後、開発した活性化法を利用した不斉反応への展開を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成22~23年にかけて、ほぼ研究実施計画どおりに研究を遂行することができている。加えて、本検討において、アミンが還元剤となることを見出しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、本研究は計画通りに遂行されていることから、平成24年度も引き続き、研究実施計画に従い、研究を推進する。また、計画の実施が困難となった場合、平成23年度に得られた新たな知見を利用した反応開発を行うことを計画している。
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