Research Abstract |
本研究は, 遺伝子組換え技術及びエマルション技術を駆使して, “新規経口アルブミン製剤”を開発することを目的として企図された. 本年は, 部位特異的変異法を用い作製したアルブミン変異体 (HSA mutant), 及びコントロールとしてintactアルブミン (HSA) を用いて, 脱溶媒和法に従い, ナノ粒子の調製を行った. 実際には, 50-100 mg/mLの各アルブミン溶液にエタノールを持続滴下することで脱溶媒和し, 超高圧乳化分散機Microfluidizerに適用し, 処理を5回行う事で均一化を行った. その後, 8%グルタルアルデヒドを加え粒子を固化し, 凍結乾燥することでナノ粒子を得た. 粒子物性は粒子径・ゼータ電位の測定, colon-26細胞を用いた細胞毒性試験 (MTTアッセイ), 加えて, MDCK細胞を用いた透過性評価を行った. 各ナノ粒子の平均粒子径は約300 nm,ゼータ電位は-5.1 mVであった.どちらも澄明な分散液として安定しており, 粒子の凝集を抑制するために十分な, ゼータ電位の値であったことが推察された. Colon-26細胞を用いた毒性試験の結果,両ナノ粒子自身による細胞毒性の影響は無いことが確認され, 投与した際の生体への影響は極めて小さいことが示唆された.MDCK細胞を用いた結果, HSA mutantナノ粒子ではコントロールと比較し, 有意な透過性の増大が認められ, 小腸上皮細胞への透過性に優れたHSA変異体ナノ粒子が作製できた. 今回調製したナノ粒子は比較的粒子径が大きく, 透過性亢進には, その微細化が必須になるものと思われる. 現在, 今回の結果を基に, 統計学的手法を用いて, 微細化における製造条件の最適化を行っており, 更に透過性の亢進したナノ粒子の設計が可能になると思われる.
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