2010 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物ケミカルジェネティクスによるWnt経路阻害剤の作用機構解明
Project/Area Number |
22790082
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
西谷 直之 岩手医科大学, 薬学部, 講師 (10286867)
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Keywords | シグナル伝達 / 発生・分化 / 癌 / 再生医学 / 薬学 |
Research Abstract |
我々は、ゼブラフィッシュ胚を用いた探索系によって、Wnt/βカテニン経路を抑制する新たな化合物IMU14とその誘導体を同定してきた。本研究では、「IMU14はβカテニンの核内機能を阻害することによってWntシグナルを抑制する。」という仮説の検証を行い、新たな抗がん剤シードの作用機構解明を試みる。IMU14化合物処理によって核内βカテニン量が減少するため、「分解による量的変化」と「核移行阻害」による可能性を考慮し下記の実験を行った。 【1】大腸癌細胞DLD-1とHEK293細胞を用いて以下の実験を行った。まず、プロテアソーム阻害剤(MG132)存在下でのIMU化合物によるβカテニンの量的挙動への影響を検討したところ、IMU化合物によるβカテニンの減少が観察されなくなった。さらに、リン酸化特異抗体を用いたウェスタンブロットによって、IMU化合物がβカテニンSer33, Ser37, Thr41のリン酸化を亢進することが確認された。Ser33, Ser37, Thr41のリン酸化がβカテニンの分解を促すことが知られているため、IMU化合物が「βカテニンの分解による量的変化」によって抗Wnt作用を示すことが示唆された。 【2】核内βカテニンの減少がIMU化合物の薬理作用に重要かを検証するために、外来NLSを人工的に付加したβカテニン(NLS-βカテニン)を用いて、βカテニンの強制的核移行実験を行った。NLS-βカテニンまたは野生型βカテニンのmRNAをゼブラフィッシュ受精卵にインジェクトし、Wntによる背側化シグナルの抑制効果を評価した。IMU化合物は、野生型βカテニンによる背側化を部分的に抑制したが、NLS-βカテニンによる背側化は抑制しなかった。したがって、IMU化合物がβカテニンの核以降以前のステップを阻害することが示唆された。
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