2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物ケミカルジェネティクスによるWnt経路阻害剤の作用機構解明
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22790082
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
西谷 直之 岩手医科大学, 薬学部, 講師 (10286867)
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Keywords | シグナル伝達 / 発生・分化 / 癌 / 再生医学 / 薬学 |
Research Abstract |
我々は、ゼブラフィッシュ胚を用いた探索系によって、Wnt/βカテニン経路を抑制する新たな化合物IMU14とその誘導体を同定してきた。本研究では、「IMU14はβカテニンの核内機能を阻害することによってWntシグナルを抑制する。」という仮説の検証を行い、新たな抗がん剤シードの作用機構解明を試みている。平成23年度は、IMU14及びその誘導体の標的分子の同定に注力した。 1.IMUレジンの作成 IMU14の高活性誘導体IMU1003を固相化してアフィニティーレジンを作成した。tetrafluorophenyl azide(TFPA)基に紫外線を照射することによって生じるnitreneを利用して、ポリエチレングリコール3分子からなるリンカーをはさみ、IMU1003にビオチンを共有結合させIMU1003-PEG3-Biotinを作成した。IMU1003-PEG3-Biotinをアビジンビーズ上に結合させ、IMU1003アフィニティーレジンを作成した。 2.IMUレジンを用いた結合実験 上記のIMU1003アフィニティーレジンとHEK293細胞に由来するタンパク質とのin vitro結合反応を行い、結合画分をウェスタンブロットによって解析した。IMU化合物の活性がβカテニンのGSK3によるリン酸化を亢進するため、βカテニンの翻訳後修飾関連因子に対する抗体を中心に用いた。その結果、IMU1003結合画分には、βカテニンやGSK3βが検出された。 3.IMU1003とβカテニンの共局在 IMU1003が長波長UV(350~365nm)によって励起され蛍光を発すること見出したため、IMU1003を用いた細胞染色を試みた。その結果、生細胞中でIMU1003がβカテニンと共局在することが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で、最もチャレンジングと考えられていた標的分子の同定が順調に進んでいることが理由として挙げられる。また、当初予想していなかった蛍光誘導体を得ることができ、作用機序解明にとって有用なツールが得られたことももう一つの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は概ね順調に進展しているため、当初の研究計画を大きく変更する予定はない。今後は、平成23年度中に見出された1剛1003結合タンパク質複合体中に、IMU1003と直接結合する標的タンパク質を同定することを予定している。さらに、標的タンパク質の発現抑制などを利用して、IMU化合物によるWntシグナル抑制機構の解明を試みる。
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