2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダウン症候群モデルマウスの記憶学習障害における酸化ストレスおよび炎症反応の役割
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22790091
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
石原 慶一 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (80340446)
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Keywords | ダウン症候群 / 酸化ストレス / 炎症 / マウスモデル |
Research Abstract |
ダウン症候群は、通常2本の21番染色体が3本となることで発症する染色体異常症であり、発達障害や記憶学習障害といった症状を呈する。ダウン症モデルTs1Cjeマウスはダウン症の症状の一つである記憶学習障害を示すが、その基盤メカニズムは明らかでない。我々は、Ts1Cjeマウスの脳内において脂質過酸化が亢進していることを見出しており、これが本モデルマウスの記憶学習障害の基盤となっている可能性を考えている。そこで、本研究課題では、このTs1Cjeマウス脳での脂質過酸化亢進が炎症を惹起しており記憶学習障害の基盤となっている可能性を検証する。Ts1Cjeマウスの脳における慢性的な炎症の亢進を明らかにする為に、炎症マーカータンパク質(シクロオキシゲナーゼ2)の発現について生化学的および組織学的な解析を行ったところ、本モデルマウスの海馬の特にCA3領域での発現上昇が認められたことから、Ts1Cjeマウスの海馬での慢性的な炎症亢進が示唆された。そこで今年度は、この炎症亢進が胎児期でも起こっているのかについて調べたところ、いくつかの炎症関連遺伝子mRNAの上昇が見られたことから、本モデルマウスの脳での炎症は、胎児期から成体期に至まで持続的に亢進していること考えられた。Ts1Cjeの脂質過酸化は1ヶ月齢マウスでは見られなかったことから、Ts1Cjeマウス脳における炎症の亢進と脂質過酸化は独立している可能性が考えられた。次に、本モデルマウスに抗酸化剤である緑茶成分カテキン(EGCG)を投与したが、脳において十分な脂質過酸化の亢進抑制を検出することは出来なかった。以上の結果より、新たにダウン症モデルTs1Cjeマウスの脳では、胎児期から持続的に炎症の亢進が起こっていることが示唆された。
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