2010 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母モデル生物を用いたイノシトールリン脂質経路の制御因子の同定と機能解析
Project/Area Number |
22790093
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
喜多 綾子 近畿大学, 薬学部, 助教 (00388498)
|
Keywords | イノシトールリン脂質経路 / 細胞内輸送 / 分裂酵母モデル生物 / 低分子量G蛋白質 / Rho / クラスリンアダプター複合体 |
Research Abstract |
本研究は分裂酵母モデル生物を用いて、イノシトールリン脂質経路制御機構を解明することを目的としている。 本年度の成果として、クラスリンアダプター複合体と低分子量Gタンパク質Rho3との機能的な関連を見出した。クラスリンアダプター複合体の機能が低下した細胞(apm1破壊株)は、温度感受性を示す。この表現型を回復する因子としてRho3を同定し、Rho3がゴルジ体の物質の輸送に重要な役割を果たしているということ、また、クラスリンアダプター複合体の構成因子であるApm1とRho3が、共にゴルジ体に存在し、結合することを明らかにし、その成果は米科学誌PLoS ONEの電子版に掲載された。今年度発見したクラスリンアダプター複合体とRho3の機能的関係は、イノシトールリン脂質経路制御機構を明らかにする上で、重要な手掛かりになると考えられる。 申請者らはすでに、セカンドメッセンジャーとして重要なイノシトールリン脂質、PI(4,5)P2産生酵素であるPI(4)P5キナーゼを過剰発現すると、細胞増殖抑制を示すことを明らかにしてきた。本年度、新たに、クラスリンアダプター複合体の機能が低下した酵母細胞や細胞内輸送機能が低下した酵母細胞においては、そのPI(4)P5キナーゼ過剰発現による細胞増殖抑制効果が低下するということを発見した。これは、イノシトールリン脂質シグナルが細胞内輸送によって制御されていることを示す知見であると同時に、スクリーニングにより取得したPI(4)P5キナーゼ過剰発現による細胞増殖抑制を回復する因子が、細胞内輸送の制御因子として働く可能性があることを示唆する結果である。
|