2010 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖脂肪酸:アミノ酸抱合経路によるインスリン抵抗性の制御
Project/Area Number |
22790097
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
伊藤 崇志 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (80423119)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 脂質毒性 / 脂肪酸 / タウリン / アミノ酸 / タウリントランスポーター |
Research Abstract |
最近、脂肪酸タウリン抱合体が同定されたことから、タウリンの脂肪酸動態への関与が考えられるが、詳細な検討はなされておらずその病態生理学的意義は明らかでない。肥満や脂質代謝異常に伴う細胞内における脂質の蓄積は、セラミドなどの毒性脂質の蓄積に伴うインスリン抵抗性の発現や組織傷害につながることが明らかにされている。したがって、脂肪酸のアミノ酸抱合経路が細胞内の余剰な遊離脂肪酸の解毒機構として機能して、脂肪毒性に起因したインスリン抵抗性の制御に関わる可能性が考えられたことから、本研究では長鎖脂肪酸のタウリン抱合とインスリン感受性や耐糖能との関連性を明らかにすることを目的として実験を行い、以下の研究結果を得た。1)組織中タウリンの欠乏を呈するタウリントランスポーター遺伝子欠損マウス(以下、TauTKOマウス)において、骨格筋中トリグリセリド含量が野生型マウスと比較して若干低下しており、通常の飼育環境においてはタウリン欠乏で余剰な脂質の蓄積がみられないことがわかった。2)T60%脂肪含有高脂肪食で飼育した結果、auTKOマウス、野生型マウスともに顕著な体重増加がみられた。TauTKOマウスでは通常の環境では野生型に比較して低体重を示すが、高脂肪食飼育下では高脂肪食開始から16週において野生型と同程度の体重であった。3)耐糖能を評価した結果、通常の飼育環境下ではTauTKOマウスは野生型に比較して絶食時血糖値、グルコース負荷後の血糖値変化が下回っていたが、高脂肪食飼育後ではTauTKOマウス、野生型マウスともに耐糖能の糖取り込み機能が低下した。4)インスリン感受性を評価した結果、高脂肪食飼育下ではインスリン感受性の低下がみられたが、インスリン抵抗性の程度は野生型マウスの方が大きかった。以上の結果から、タウリン欠乏状態により脂質動態に変化があることが推察されたが、今後の詳細な検討が必要である。
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