2010 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖の分子置換による新規抗ウイルス薬の設計手法の開発
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22790115
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松原 輝彦 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (10325251)
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Keywords | 感染症 / インフルエンザ / 感染阻害剤 / ペプチド / ライブラリー / ヘマルチニン / ファージ / 親和性選択 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスはヘマグルチニン(HA)が受容体糖鎖であるシアル酸含有糖鎖に結合することで感染する。この結合を阻害する分子は感染阻害剤として作用する可能性がある。本課題では糖鎖リガンドをペプチドに分子置換し、既存にはない新しい作用を持つインフルエンザの治療薬の分子設計を行っている。これまでにペプチドライブラリーから単離されたHA結合ペプチドの1つである15残基のペプチドD1の中央7残基目のセリン(Ser)にα-GalNAcを修飾すると、脂質修飾したペプチドと同レベルの高い感染阻害活性があることがわかっている。H22年度ではこの阻害メカニズム解析について検討した。 まず、α-GalNAcを修飾したペプチドD1(GalNAc)が阻害活性を有する理由を解明するために、糖の位置および種類を変えた糖ペプチドを化学合成した。GalNAc以外に、GlcやLac(=Gal-Glc)などの糖を含むペプチド、およびビオチン化糖ペプチドをFmoc化学による固相合成で合成した。ペプチド自動合成機(島津製作所)で固相樹脂に順次アミノ酸を連結させ、最後にペプチドを樹脂から切断した。糖アミノ酸のアセチル基はナトリウムメトキシドで加水分解を行ない、最後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製して凍結乾燥後、HPLCおよび質量分析で純度および目的物の同定を行なった。 次にビオチン化D1を用いた阻害実験によって、糖ペプチドのHAとの相互作用で評価した。その結果、糖ペプチドのHAとの相互作用の強さに比例してウイルスの感染阻害活性が高くなり、高い相関性を示した。また蛍光標識したペプチドおよびウイルスをMDCK細胞と相互作用させ、共焦点レーザー顕微鏡およびフローサイトメトリーを用いて評価したところ、直接細胞と相互作用しないことがわかった。糖ペプチドによる阻害活性は、ウイルス表面のHAに結合することでウイルスの感染を阻害することが示唆された。
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