2010 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞に対して選択的にマクロファージ誘導作用を持つ新規がん治療薬の開発
Project/Area Number |
22790126
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
大野 彰子 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 主任研究官 (70356236)
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Keywords | 医薬品化学 / 新規抗がん剤 / ガドリニウム / フォスファチジルセリン / MRI |
Research Abstract |
癌を診断するための検査法として一般的にMRI(Magnetic Resonance Imaging system:磁気共鳴画像装置)とその検出用にMRI造影剤が使用されている.MRI造影剤は主に常磁性のガドリニウム(gadolinium : Gd)が利用され,網内系組織に取り込まれる性質を応用して腫瘍を鑑別診断する.本研究はがん細胞に対して選択的にマクロファージ誘導作用を持つ新規がん治療薬の開発を目的とし,癌の早期発見および治療薬の開発に資する研究を行う.具体的には,Gdの腫瘍部に集積する性質に着目し,アポトーシス誘導時に現れる'eat me signal'として知られているフォスファチジルセリン(PS)にGdを配位させた化合物の創製である.本化合物の特徴は,Gdによって腫瘍組織内に集積するとPSが細胞表面に露出し,細胞表面のPSは自己免疫細胞(マクロファージ)によって認識され,PSによって擬アポトーシス状態となった癌細胞はマクロファージを腫瘍組織内に特異的に誘引し,その貪食作用によって癌細胞を消失させることが期待される.さらに,本化合物はGd錯体を形成していることからMRIによる造影も可能となり,治療効果を追跡できると考える.昨年度は,標的となるがん細胞(網内系組織)に対して選択的なマクロファージ誘導作用を持つ新規がん治療薬PS-Gd誘導体の分子設計と合成を検討し,これまで,PS構造とGd配位子の候補となる構造を数種類組み合わせることでPS-Gd誘導体を設計し,それぞれについて分子軌道法などの化学計算を実行し誘導体の電化密度の予測化と配座解析を行った.現在,その結果に基づいた合成を実施している.今後,合成した化合物の生物学的な評価を行い,その効果を明らかにすることによって,癌の検出と同時にマクロファージの働きにより腫瘍を死滅させることで,腫瘍疾患の診断と治療が同時に行える可能性を有する"身体に優しい癌検出・治療薬"の開発が期待される.
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Research Products
(10 results)