2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞に対して選択的にマクロファージ誘導作用を持つ新規がん治療薬の開発
Project/Area Number |
22790126
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
大野 彰子 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 主任研究官 (70356236)
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Keywords | 医薬品化学 / 新規抗がん剤 / ガドリニウム / フォスファチジルセリン / MRI |
Research Abstract |
本研究ではPSにGd構造を導入した化合物(PS-Gd)を開発する.PS-Gdは従来の抗がん剤にみられる細胞障害はなく,正常細胞はGdの集積性が低いことから,PS-Gdは副作用の少ないがん細胞を標的とした新規抗がん剤として利用できる.さらに,PS-GdはGdによるMRI造影剤としての機能を併せ持つため腫瘍組織の可視化が可能になることから,がんの治療薬と共に診断と治療経過を観察できる優れた抗がん剤として期待できる.平成23年度はPS-Gd誘導:体について分子軌道法を用いた配座解析の予測と,設計した候補化合物の合成および生物活性の予備的検討を実施した. 1.配座解析の予測:PS構造とGd配位子の候補となる構造を数種類組み合わせることでPS-Gd誘導体を設計し,それぞれについて分子軌道法などの化学計算を実行し誘導体の配座解析の予測を行い,その結果に基づいた合成を実施した. 2.PS-Gd誘導体の分子設計と合成:本化合物は,がん細胞を選択的に擬アポトーシス状態に誘導するためにPS構造とDTPA-Gd構造を適切な長さのリンカーで結合させた化合物である.PSとリンカーの連結部位は,生体内に存在している種々の酵素に対して安定であると予想される亜リン酸エステル構造を有し,さらに,PSとDTPA-Gdを結ぶリンカーの長さはマクロファージによるPS構造の認識および細胞への取り込みに関する脂溶性の向上を考慮する必要があるため,幾つかのリンカーの長さの異なる誘導体を合成した. 3.生物活性の予備的検討:HepG2細胞を用いて各々の誘導体の取り込みをNMRによる緩和時間の長さから検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的となるがん細胞(網内系組織)に対して選択的なマクロファージ誘導作用を持つ新規がん治療薬PS-Gd誘導体の分子設計と合成を検討した.作年度は目的とする化合物を複数合成し,来年度に予定している生物試験についても予備的検討を行うことが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージへの親和性の向上を強化した誘導体の設計および合成と生物試験による化合物の検証を行う.具体的には,今年度は標的としたがん細胞に対して,より効果的なマクロファージの誘導性を有することが必要となるためマクロファージ誘因物質であるPSを複数分子付加させたGd配位子の設計および合成を実施する.合成した各種誘導体は,生物学的な実験によりPSに対するマクロファージ選択的誘因物質としての検証を行い,親和性が有意に向上すると予測される化合物についての候補化合物の絞り込みを行う.さらに合成法を考慮した上での合成予定化合物を決定した後,大量合成を行う予定である.
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Research Products
(16 results)