2010 Fiscal Year Annual Research Report
薬物間相互作用及び遺伝子多型による動態変化と臨床的重要度の予測データベースの構築
Project/Area Number |
22790147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大野 能之 東京大学, 医学部附属病院, 功教 (40553699)
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Keywords | 薬物間相互作用 / 遺伝子多型 / データベース |
Research Abstract |
【研究目的】薬物間相互作用や薬物代謝酵素の遺伝子多型は時に重大な臨床的帰結を生むものの、市場の薬の全てについての臨床試験の実施は不可能である。さらに薬物間相互作用と遺伝子多型が共存する場合、その臨床的影響は極めて複雑となる。申請者は既に薬物動態的相互作用の新しい網羅的予測法を提唱し(Ohno Y et al. Clin Pharmacokinet,2007 ; 46 : 681, ibid. 2008 ; 47:669)、さらにその予測される動態変動の程度を考慮して、スタチンなど3つの治療薬分野で相互作用の臨床的重篤度を層別化することで注意喚起するシステム(PISCS)を構築した(ibid, 2009 ; 48:653)。本申請研究では、遺伝子多型の影響も統合させて、重要な治療薬分野について本研究を拡張する。【研究方法】既に我々は、CYP3A4の阻害および誘導による相互作用について、阻害薬の阻害率(IR_<CYP3A4>あるいは誘導薬のCYP3A4のクリアランス活性の増加(IC_<CYP3A4>)と、基質薬のCYP3A4のクリアランスの寄与率(CR_<CYP3A4>)から精度良く予測出来ることを報告している。さらにこの方法を他のCYP分子種に拡張するとともに、市場にある薬剤および新薬の相互作用の報告から、動態学的に顕著な相互作用を網羅的に調査した。また、特にCYP2D6*10を中心として遺伝子変異と相互作用の関係を定量的に示した。また、代謝寄与率をin vitroで求める方法として、市販の発現系ヒトP450を利用したRAF法に注目し、多くの分子種のマーカー基質(1A2 : phenacetin, 2A6 : coumarin, 2B6 : bupropion, 2C8 : paclitaxel, 2C9 : losartan, 2C19 : omeprazole, 2D6 : dextromethorphan, 2El : chlorzoxazone, 3A4 : testosterone)による活性定量法を確立し、LC-MS/MSにて解析対象薬の未変化体の消失を定量することで代謝速度を一斉に解析する方法を構築した。【研究成果】薬物間相互作用の調査から、CYP1A2, 2C8, 2C9, 2C19, 2D6, UGTを介する相互作用の代表的な基質と阻害薬を選択し薬物動態学的に分類するとともに、添付文書の注意喚起などを参考として基質薬を臨床的なリスクに基づいた分類を行った。これらの情報をPISCSと組み合せることで、統合的な薬物間相互作用のマネジメントを可能とするとともに、これを薬剤師むけの情報誌に特集として継続的に発表した(PharmaTribune誌への発表)。また、in vitroの評価系を構築して定量的な臨床報告のない薬剤の代謝寄与率を評価し、特にエルゴタミンなどの麦角アルカロイドの代謝が、極めてCYP3A4選択的であることなどを明らかとした。
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