2010 Fiscal Year Annual Research Report
ピーク・トラフ2点採血デザインによる小児を対象とした臨床薬物動態試験
Project/Area Number |
22790149
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田口 雅登 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20324056)
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Keywords | 採血デザイン / 臨床薬物動態試験 / 小児 |
Research Abstract |
標準的な薬物動態試験では、モーメント解析やコンパートメントモデル解析によって、一人ひとりの被験者(数名から十数名)から動態パラメータを得るため、経時的多数回の採血が必要となる。また、薬物動態に及ぼす成長や加齢、腎機能、肝機能、あるいは薬物併用の影響を評価するためには、患者においても多数回の採血デザインで臨床試験を行う必要があるが、倫理的にも経済的観点からも問題が多い。最近申請者は、薬剤を繰り返し服用中の個々の患者に対して2点のみの採血を行い、血中濃度のピーク値(C_<peak>)とトラフ値(C_<trough>)を解析する事によって、薬物血中濃度曲線下面積(AUC)を簡便に推定する方法(図1)を考案し、この方法の臨床薬物動態試験における有用性をコンピュータシミュレーションによって確認した。ピーク・トラフ2点採血デザインはAUC推定値から薬剤投与設計時に必須な個人の経口クリアランス(CL/F)に関する情報が得られる上、採血に伴う身体的苦痛や時間的拘束が比較的小さいため、患者からの研究協力が得やすいなどの利点がある。本研究では、実際の小児患者を対象に循環器官用薬に焦点を絞った連投薬物動態試験によって、2点採血デザインの有用性を再検証するとともに、得られた薬物動態変動機構に関する情報を医療現場に提供する事を目的とした。22年度は臨床的な緊急性を鑑み、当初予定していたカルベジロールの臨床試験よりも新規肺高血圧症治療薬ボセンタンの臨床試験を優先的に行った。データ解析の結果、薬物併用や薬物動態関連分子(CYPおよびOATP)の遺伝子変異には有意な影響が認められなかったものの、小児集団では年齢がボセンタンの体内動態の影響因子の一つである事が明らかとなった(論文印刷中)。先天性心疾患を有する小児にボセンタンが投与される機会は比較的高く、本研究の知見はボセンタンの適正使用を図る上で重要な知見であると考えられた。
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Research Products
(3 results)