2011 Fiscal Year Annual Research Report
癌組織の低酸素環境を標的とする、新規の時間遺伝子治療法の開発
Project/Area Number |
22790158
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松永 直哉 (門田 直哉) 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10432915)
|
Keywords | 時間治療 / DDS / 低酸素環境 / 低酸素応答性抗癌ベクター |
Research Abstract |
癌組織内では正常組織と比較し、新生血管の構造異常や間質圧上昇によって低酸素環境下におかれている。そのため癌組織は、低酸素環境下に適応し生存、増殖を可能とするための様々な因子を発現する。低酸素環境下にある細胞内では、転写促進因子(HIF)と遺伝子のプロモーター上に存在する低酸素応答配列(HRE)による低酸素環境下特有の遺伝子発現機構が存在する。また、この転写機構には日周リズムが存在し、癌組織の恒常性を制御し癌の進行を促している。本研究では、癌組織での低酸素遺伝子発現リズム機構を応用し、癌組織への選択性また発現増強を指向した遺伝子発現システムを構築する。そして癌を標的とする新規の時間遺伝子治療法の開発を行う。 実験計画として癌組織の低酸素環境応答性の遺伝子発現ベクターの作製および機能評価の検討および至適投与方法の構築をめざした。これまでに癌細胞の低酸累環境下において、発現が亢進する遺伝子を数種同定している。これら遺伝子の上流に存在するHRE配列を合成し、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの上流に挿入し、低酸素感受性遺伝子発現ベクター(HRE-CMV-vector)を作製した。機能評価を行った結果、低酸素においてプロモーター活性が増強された。また新規ベクターにshRNA配列を導入したベクターを作成し、抗腫瘍効果が認められるか否かを、腫瘍移植モデルマウスを用いて評価した。その結果、低酸素応答配列を有しないコントロールベクターと比較し、低酸素応答ベクターの抗腫瘍効果は増大した。また、抗癌タンパクNK4の低酸素感受性遺伝子発現ベクターを作製し、抗腫瘍効果を測定した結果、低酸素応答ベクターの抗腫瘍効果は増大した。本研究より、新規の低酸素応答ベクターは、通常の発現ベクターと比較し、抗腫瘍効果を増強できることを初めて立証し、低酸素環境の時刻依存的な変化に対応した遺伝子治療を可能とするツールを開発した。
|