2010 Fiscal Year Annual Research Report
外因性の尿酸前駆体物質及び尿酸に対するヒト特異的な生体防御機構の解明
Project/Area Number |
22790165
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
井上 勝央 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (50315892)
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Keywords | 尿酸 / 担体輸送 / トランスポーター / SNBT1 / 吸収 / SLC23A |
Research Abstract |
外因性の尿酸前駆体物質であるプリン塩基の腸管における吸収機構を明らかにするため、その吸収に関わるトランスポーターの探索を行った。ラット小腸に発現するトランスポーター様遺伝子について核酸塩基の輸送活性を指標にスクリーニングした結果、sodium dependent nucleobase transporter 1 (SNBT1)の同定に成功した。SNBT1 mRNAの発現は小腸においてのみ顕著に高く、他の臓器ではその発現が認められなかった。SNBT1はuracil, thymine, hypoxanthineを基質とし、adenineとcytosineは基質としないことが明らかとなった。その輸送は顕著なナトリウム依存性を示し、核酸塩基(nucleobases)により顕著に阻害されたが、uridineなどの核酸(nucleosides)では阻害されなかった。これらの特性はラット小腸を用いた反転腸管実験におけるuracil輸送でも確認された。したがって、SNBT1はラット小腸上皮細胞における核酸塩基の吸収に寄与している可能性が考えられた。しかし、染色体遺伝子データベースを用いた遺伝子解析により、SNBTのorthologは、ゼブラフィッシュ、マウス、ラット、ウシにおいて存在が確認できたが、チンパンジーやヒトでは遺伝的に欠損していることが明らかとなった。尿酸の分解酵素であるuricaseもこれら霊長類において遺伝的に欠損しているため、SNBTの機能欠損は霊長類の進化過程におけるuricaseの欠損と同調している可能性が示唆された。したがって、ヒトはuricaseの欠損により尿酸分解能力を欠くため、外因性の核酸の体内流入を制限する必要があり、その進化の過程でnucleobaseの吸収に関わるSNBTの機能的な欠損が惹起された可能性が考えられる。
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