2010 Fiscal Year Annual Research Report
体内時計システムを応用した薬物誘発性うつ病を予測する評価系の構築
Project/Area Number |
22790166
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
牛島 健太郎 自治医科大学, 医学部, 助教 (70448843)
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Keywords | 体内時計 / 視交叉上核 / 転写活性 / 培養細胞 / 精神障害 |
Research Abstract |
薬物誘発性精神疾患の原因薬物として知られるインターフェロンは、マウスの生体時計機能を障害することが知られている。この事象が培養細胞を用いたin vitro研究でも認められるか否かを明らかにするため、ルシフェラーゼ発現ベクターを用いた検討を行った。培養細胞に主要時計遺伝子(Per2)の転写調節領域を組み込んだプラスミドをトランスフェクトし、既報の手法を用いて培養細胞内でその転写活性に日内リズムを形成させ、次いで、そこにインターフェロンを添加するとルシフェラーゼの転写活性リズムの振幅が減少することを見出した。以上より、本システムを用いることにより薬物誘発性精神障害が予測できるものと考えられる。 また近年、オセルタミビルによる小児患者における行動異常が社会問題となった。そこでオセルタミビルが時計遺伝子発現を変化させるか否かをBalb/cマウスを用いて検討したところ、若齢マウスでは視交叉上核における時計遺伝子(Per1)の発現量が増加したが、成熟マウスではそのような変化は認めなかった。さらに種々の拮抗薬を用いた検討により、若齢マウスにおけるオセルタミビルの影響はNMDA受容体を介していることが明らかになった。 NMDA受容体は、一般に脳の発達、学習、記憶、神経情報処理に重要な役割を果たしている。NMDA受容体の発現分布は発生から成熟の過程で変化し、視交叉上核が存在する視床下部では出生後に発現量が減少することが知られている。したがって、NMDA受容体が発現している培養細胞系を用いることにより、小児に特異的に生じる薬物誘発性精神障害の発現リスクが予測できるものと考えられる。
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