2010 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化症治療薬創製への基盤:酸化LDL生成酵素阻害に基づくアプローチ
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22790176
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
竹田 修三 第一薬科大学, 薬学部, 講師 (00460379)
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Keywords | カンナビジオール-2',6'-ジメチルエーテル / 動脈硬化 / 酸化LDL / 大麻草 / カンナビノイド |
Research Abstract |
本研究の目的は、申請者らが独自に見出した化合物であるカンナビジオール-2',6'-ジメチルエーテル(CBDD)を応用した新たな動脈硬化症治療薬創製への分子基盤を確立することにある。近年、我が国においても食生活の欧米化に伴い、動脈硬化症患者は急増している。また、巷では、メタボリックシンドロームなる言葉がよく聞かれるが、本生活習慣病も脂質異常症(以前は、高脂血症と呼ばれた)を基礎疾患とした病気である。 動脈硬化症は、幾つものリスクファクターが複雑に絡み合い発症する疾患である。これまで、血中の低密度リポプロテイン(LDL)が発症に関与しているものと考えられてきたが、最近になり、LDLではなく、その酸化体である酸化LDLが真の悪玉コレステロールとして注目されるようになった。この酸化LDL生成に深く関与している酵素が15-リポキシゲナーゼ(15-LOX)であり、その阻害剤は動脈硬化症治療薬として有望である。しかし、これまでに15-LOXの阻害剤は存在しなかった。我々は幸運にも15-LOXの強力かつ特異的な阻害剤であるCBDDを見出していた。これまでは、15-LOXの基質としてリノール酸やアラキドン酸などの不飽和脂肪酸を用いて行っていた。本研究では、これら脂肪酸が実際に含まれているLDLを酵素源として、15-LOXによる酸化LDL生成に与えるCBDDの影響を検証することを目的とした。その結果、CBDDは15-LOXによる酸化LDL生成をその濃度依存的に抑制することが明らかになった。また、予備的検討ではあるが、CBDDと15-LOXのドッキングシュミレーション解析を実施したところ、CBDDによる15-LOX阻害にはCBDDと15-LOXの疎水性アミノ酸残基との相互作用が関与していることが示された。 したがって、CBDDは15-LOXとの疎水的相互作用により、酵素的な酸化LDL生成を阻害することが示唆された。なお、本研究で見出した内容の一部は、学術雑誌にその掲載が受理された。今後は、動脈硬化モデル動物を用いた検討を行う予定である。
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