2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790193
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
向後 晶子 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (20340242)
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Keywords | Dlg1 / ノックアウトマウス / 器官形成 / 内耳 / 心臓 / 有毛細胞 / Notch |
Research Abstract |
本研究は、PDZ蛋白質Dlg1の器官形成過程における機能解明を目的として実施している。これまでに、Dlg1遺伝子ノックアウトマウス(Dlg1 KOマウス)では各種心奇形が発症することを見出してきたが、2010年、平面内細胞極性の異常マウスに見られる表現型がDlg1KOマウスと酷似していることが報告された。 そこで平成23年度はまず、Dlg1 KOマウスにおける平面内極性形成の異常の有無に着目して研究を行った結果、以下2つの成果を得た。 1.平面内極性形成について Dlg1 KOマウスのコルチ器有毛細胞の平面内極性を観察したが、不動毛の配向およびfzd3などの極性蛋白質の細胞内局在に異常は見られなかった。 2.コルチ器有毛細胞の過剰産生 コルチ器観察の過程で、Dlg1 KOマウスでは外有毛細胞および内有毛細胞の過剰列(外有毛細胞:3列→4列、内有毛細胞:1列→2列)が散見された。これらの場所では、支持細胞(Deiter's細胞)も有毛細胞数と対応して増加していた。胎生14.5~16.5日にBrdUを投与して増殖細胞を可視化したところ、Dlg1 KOマウスでは支持細胞、とくにHensen細胞でBrdU陽性の細胞が増加していた。コルチ器の有毛細胞、支持細胞は、通常、胎生14日までに最終分裂を終えることが知られているので、Dlg1 KOマウスでは、有毛細胞の過剰産生に加え、これら支持細胞の増殖停止機構が障害されていることが示された。 今回観察された支持細胞の増殖停止時期の遅延、有毛細胞の過剰産生は、Notchシグナル系構成因子のミュータントマウスでも報告されていることから、Dlg1とNotchシグナルの機能的な関連が推測され興味深い。今後Dlg1の機能を解明する上で有用な足がかりとなる表現型を見出すことができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Dlg1 KOマウス内耳有毛細胞の不動毛の配向を観察、定量する計画については、「異常なし」との結果を得ることができ目的を達成できた。また平面内極性に関わる蛋白質の細胞内局在についても十分な解析を行うことができた。さらに内耳有毛細胞の過剰産生という、予想外の観察結果を得ることができた。これは今後のDlg1機能解明へとつながる重要な発見であると考えられることから、本年度は計画以上の進展があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の究極的な目的は、哺乳類発生時の器官形成におけるDlg1の機能を解明することである。これまでに、泌尿器、心臓、骨組織、消化管、内耳など様々な器官形成にDlg1が必要であることを示してきたが、Dlg1の作用機序は未解明であり、これを解明することが課題であった。昨年度はDlg1 KOマウス内耳がNotchシグナリング異常マウスと酷似した表現型を示すことが示された。そこで今後はNotchシグナリングとDlg1との機能的な関連、接点を探ることに焦点を当てて研究を推進していく予定である。その過程でNotchシグナル関連ミュータントマウスが必要になった場合には、新たにマウスを導入する。
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Research Products
(5 results)