2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790200
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
中川 祐子 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (90422500)
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Keywords | インスリン |
Research Abstract |
本研究の目的は、申請者が見いだした「膵β細胞に発現する甘味受容体」のシグナル伝達系の詳細を明らかにするとともにその生理的意義を明らかにすることである。 インスリンは糖代謝を調節するもっとも重要なホルモンで、その作用不全は糖尿病を招来する。我が国における糖尿病患者数は増加の一途をたどり、社会的にも大きな問題となっている。我が国の糖尿病患者の大半はインスリン分泌不全を特徴とする2型糖尿病であることから、インスリン分泌調節の全容を解明することは有効な治療法を開発するためにも重要な課題である。インスリン分泌を調節する最も重要な因子はグルコースで、その作用機構に関してはこれまで多くの研究がなされてきた。現在、一般に認められている定説では、グルコースはGlut2を介して細胞内に取り込まれ、解糖系により代謝される。このとき産出されたATPあるいはATP/ADPの濃度比が増加することでATP感受性K+チャネル(K_<ATP>チャネル)が抑制され、脱分極が起きる。これにより電位依存性Ca^<2+>チャネル(VDCC)が活性化され細胞内Ca^<2+>が上昇する。これがインスリン顆粒の開口放出を引き起こす。この他にもK_<ATP>チャネルを介さない経路の存在が明らかになるなどいまだ明らかでない点も少なくない。 申請者は膵β細胞のシグナル伝達に関与する複数のセカンドメッセンジャーを、単一細胞でしかも同時に可視化する測定系を確立し、その鋭敏な測定系を用いてβ細胞におけるシグナル伝達機構を解析してきた。その結果、最近以下のような特筆すべき結果を得た。 プロテインキナーゼC(PKC)基質MARCKSを用いた鋭敏なPKC活性モニター法によりグルコース添加後のPKCのリン酸化活性を計時的に観察すると、グルコース添加後わずか数秒以内にPKCが活性化されるのである。定説に従えば、グルコースの代謝後KAnチャネルが抑制されてCa2+上昇が惹起されるためPKC活性化には数分かかる筈である。したがって現在の定説では説明できない素早い反応がグルコースにより惹起されるのである。
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