2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790209
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 大樹 京都大学, 薬学研究科, 特定助教 (40467428)
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Keywords | TRICチャネル / リアノジン受容体(RyR) / イノシトール3リン酸受容体(IP3R) / 高血圧 / 徐脈 / 血管トーヌス |
Research Abstract |
申請者のグループにて数年前に見出された小胞体TRICチャネルは、Ca^<2+>放出と連動して機能するカウンターイオンチャネルである。TRIC-A欠損マウスでは、高血圧、徐脈、心肥大といった循環器系異常が観察されており、本研究ではそれら病態発症メカニズムの解明を目指した。平成22年度には、特に高血圧、徐脈の発症メカニズムの解明を中心に研究を進めた。まず、徐脈は高血圧による圧反射受容亢進によるものであることが自律神経遮断薬や血管作動性の収縮・弛緩薬を用いた薬理学的な解析により明らかとなった。また、TRIC-A欠損マウスにてCa^<2+>チャネル阻害薬により高血圧が改善したことから、L型Ca^<2+>チャネルが発現する血管平滑筋での異常が示唆された。次いで、典型的な抵抗血管である腸間膜動脈を摘出し、血管径及び細胞内Ca^<2+>濃度の測定を行ったところ、Ca^<2+>チャネルを介したCa^<2+>流入が増加し定常的な細胞内Ca^<2+>濃度が上昇した結果、血管が恒常的に収縮していることが明らかとなった。これは血管平滑筋において自発的なリアノジン受容体(RyR)からのCa^<2+>放出、つまりCa^<2+>スパーク頻度が減少したためで、これにより細胞表層膜のCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネル活性(spontaneous transient outward currents, STOCs)頻度を低下させ、膜電位を脱分極させることで生じていると結論付けた。以上の結果は、TRICチャネルが血管トーヌス調節に深く寄与することを示唆するものである。さらに共同研究により、ヒトTRIC-AにおけるSNPsが本態性高血圧の発症に関係し、TRIC-A SNPsを有する高血圧患者では降圧薬感受性が有意に低いことを明らかにした。このように、マウスにおけるTRIC-A欠損及びヒトにおけるTRIC-A SNPsが高血圧を発症させることからTRIC-Aの有無あるいは活性の差が血管トーヌスの調節に寄与していることが明らかとなった。TRICチャネル自体は比較的新規でありまだまだ研究途上な分子であることから、本研究を発端として本態性高血圧の治療薬開発へと繋がることを期待する。
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Research Products
(1 results)