2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790227
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松崎 健太郎 島根大学, 医学部, 助教 (90457185)
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Keywords | 生理学 / 神経科学 / 体温調節 / 暑熱馴化 / 神経新生 |
Research Abstract |
暑熱暴露されたラットの前視床下部における神経前駆細胞の分化を解析し、暑熱馴化形成の中枢機序の解明を目指した。暑熱暴露によるラット前視床下部における神経前駆細胞の分裂はBrdU標識法にて免疫組織学的に解析した。暑熱暴露したラットの前視床下部において、神経前駆細胞の分裂が促進され、細胞が新生することを見出した。この暑熱暴露によるラットにおける細胞新生は、側脳室下領域や海馬歯状回などの中枢領域では対照群との差が確認されなかったことから、体温調節中枢である前視床下部に特異的な生体反応であり、体温調節反応に関与する可能性が極めて高いことが示唆された。さらに、暑熱暴露によって新生した細胞が機能的に成熟した神経細胞に分化しているかを検討するために、抗BrdU抗体および抗成熟ニューロン抗体を用いて免疫二重染色により解析した。その結果、ラット前視床下部において、暑熱暴露によって新生した細胞の一部が成熟神経細胞に分化することが明らかになった。暑熱暴露によって新生した細胞のうち約15%がグルタミン酸作動性神経細胞のマーカータンパク質を発現しており、約10%がGABA作動性神経細胞のマーカーを発現していた。暑熱暴露によって新生した成熟神経細胞の視床下部における発現分布を解析した。その結果、これらの細胞は体温調節最高位中枢である前視床下部/視索前野をはじめ、背内側核、腹内側核、室傍核などに局所的に発現しているが、後外側視床下部にはほとんど発現していなかった。暑熱馴化したラットは熱放散能力の向上に伴い耐暑者熱性が亢進する。脳室に細胞増殖阻害剤を持続的に投与したラットでは溶媒を同様に投与したラットよりも耐暑熱性が低下していた。以上の結果より、ラット視床下部における神経細胞新生が長期暑熱馴化における体温調節機能の形成に関与する可能性が示唆された。
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