2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経系における核外エストロゲン受容体を介したエストロゲン急性作用機構の解明
Project/Area Number |
22790229
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石井 寛高 日本医科大学, 医学部, 助教 (20445810)
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Keywords | 生殖生理学 / 神経内分泌学 / 生物物理学 / ホルモン / ステロイド / エストロゲン / エストロゲン受容体 / 女性ホルモン |
Research Abstract |
女性ホルモンであるエストロゲンは、脳神経系に作用し、神経細胞保護や神経細胞の可塑性に影響を与えている。これらのエストロゲン作用は急性的であるため、核外のエストロゲン受容体様タンパク質を介して作用を発揮すると考えられていたが、そのタンパク質の実体は謎であった。それゆえ、本研究では、その核外女性ホルモン受容体様タンパク質を同定し、その分子特性を解析することで脳内でのエストロゲン急性作用の生理的意義を明らかにすることを目的とした。 モデル動物であるマウスを用いて、5'-RACE・3'-RACE法とRT-PCR法により、エストロゲン受容体αのmRNA構造及びその情報をゲノム上にマッピングすることで遺伝子構造の同定を試みた。その結果、マウスエストロゲン受容体α遺伝子の構造は従来考えられていた描像よりも遥かに複雑であり、選択的プロモーターの使用と選択的スプライシングにより、その遺伝子から多様なmRNAとタンパク質が生成することを発見した。そして、その様々なmRNA及びタンパク質から脳神経系で発現する核外局在型エストロゲン受容体を探したところ、イントロン上に存在するプロモーターを選択的に使用することで生じるN末端欠損型変異体の1つがその特徴を保持していることを見出した。 また、脳内でのエストロゲン作用の生理学的意義を調べるために脳内におけるステロイド合成・代謝酵素の発現を解析した。すると、脳特に記憶学習の中枢である海馬ではコレステロールからエストロゲンの合成に必要な酵素群がすべて発現しており、それらの発現量が幼若期の海馬で高いことを見出した。これらの実験結果は、幼若期の脳ではコレステロールからエストロゲンを合成しており、それが局所的・急性的に作用し、脳機能を調節するという新規のエストロゲン合成・作用経路の存在を示唆している。
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Research Products
(13 results)