2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミオシン軽鎖ホスファターゼの活性化を介した、一酸化窒素による血管平滑筋弛緩機構
Project/Area Number |
22790240
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
仙葉 愼吾 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40466496)
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Keywords | シグナル伝達 / 血管平滑筋 / 一酸化窒素 / ミオシンホスファターゼ / MYPT |
Research Abstract |
本研究では、ミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLCP)の制御サブユニットであるMYPT1を脱リン酸化しMLCP活性を上昇させる働きを持つ「MYPT1ホスファターゼ」を同定し、一酸化窒素(NO)で誘導される血管平滑筋弛緩との関連を明らかにすることを目的としている。平成22年度は、MYPT1ホスファターゼの同定を行った。MLCP活性はMYPT1の696番目のスレオニンがリン酸化されることで抑制される。そこで、このリン酸化部位を含む100残基程度のMYPT1断片を作成し、これをリン酸化の安定なアナログであるチオリン酸化したもの(tp-MYPT)、あるいは非リン酸化状態のもの(unp-MYPT)をリガンドとしたアフィニティーカラムクロマトグラフィーを行った。そして、ウシ大動脈平滑筋抽出液からそれぞれのカラムに結合したタンパク質を得た。この結合タンパク質を用いてリン酸化MYPT1を基質としたホスファターゼ活性を測定した結果、tp-MYPTに特異的に結合するホスファターゼが存在することが明らかとなった。このホスファターゼの活性は1μMのオカダ酸によって完全に阻害されたことから、1型セリン/スレオニンホスファターゼに属するものであるものと推測された。次に、2次元電気泳動でtp-MYPT特異的結合タンパク質を分離し、質量分析計を用いた同定を試みた。その結果、1型セリン/スレオニンホスファターゼの触媒サブユニットであるPP1cδが特異的に結合していることが明らかとなった。PP1cδはMLCPの触媒サブユニットであることから、MLCPが自身のMYPT1を脱リン酸化、すなわち自己脱リン酸化することによってその抑制を解除している可能性が考えられた。平成23年度では、培養平滑筋細胞や血管平滑筋標本を用いて、自己脱リン酸化活性にNOがどのような影響を与えるか検討する予定である。
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