2010 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷の運動機能障害に対するデノソミンの薬理作用と神経回路網の構築機序の解析
Project/Area Number |
22790246
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
勅使川原 匡 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 研究員 (40403737)
|
Keywords | 脊髄損傷 / 神経 / デノソミン / グリア瘢痕 / 突起伸展 / 軸索 / 樹状突起 / アストロサイト |
Research Abstract |
本研究は、神経機能障害を改善する新規創薬シーズの探索、および神経回路網形成の分子機序を解明することを目的とし、脊髄損傷の運動機能障害に対する新規化合物1-deoxy-24-norsominone (Denosomin)の薬理効果を解析している。 脊髄損傷マウスに対するDenosomin投与は、損傷脊髄領域における神経軸索の再伸展を促進させ、マウスの後肢運動機能障害を回復させることを明らかとした。また、Denosominを投与された脊髄損傷マウスは、損傷脊髄領域でのミクログリアの活性低下(炎症の緩和)とアストロサイトの増加もみられた。初代培養神経細胞においても、Denosomin刺激による神経細胞の突起伸展やシナプス形成の促進効果をみとめた。さらに、Denosomin投与された単離培養アストロサイトは、細胞の増殖率が増加していた。初代培養神経細胞の突起伸展は、Denosominを前処置したアストロサイトとの共培養、およびDenosomin処置したアストロサイトの培養メディウム上清の投与によっても促進された。 これらの結果から、Denosominは脊髄損傷による運動機能障害を回復する新規薬剤候補となる可能性を明らかとした。さらに、Denosominによる神経細胞の突起伸展の作用機序の一つとして、Denosominによって刺激されたアストロサイト由来の液性因子が関与する可能性を示した。現在、その液性因子の同定を試みている。Denosominは神経細胞だけでなく、グリア細胞にも作用する多面的な薬理効果をもつことが特徴的である。また、神経回路網の再形成には、神経細胞とグリア細胞の間での相互作用が重要である可能性も示唆された。
|