2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷の運動機能障害に対するデノソミンの薬理作用と神経回路網の構築機序の解析
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22790246
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
勅使川原 匡 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (40403737)
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Keywords | 脊髄損傷 / 神経 / デノソミン / グリア瘢痕 / 突起伸展 / 軸索 / 樹状突起 / アストロサイト |
Research Abstract |
本研究は、神経機能障害を改善する新規創薬シーズの探索、および神経回路網形成の分子機序を解明することを目的とし、脊髄損傷の運動機能障害に対する新規化合物1-deoxy-24-norsominone (Denosomin)の薬理効果を解析している。脊髄損傷マウスに対するDenosomin投与は、損傷脊髄領域における神経軸索の再伸展を促進させ、マウスの後肢運動機能障害を回復させることを明らかとした。また、損傷脊髄領域では、ミクログリアの活性低下(炎症の緩和)とアストロサイトの損傷内部への著しい浸潤がみられた。損傷脊髄の内部で増加していたアストロサイトは、Denosominによるアストロサイトの増殖促進と細胞死保護の効果が原因と考えられた。初代培養神経細胞においても、神経細胞の突起伸展はDenosomin刺激によって促進され、シナプス形成の促進効果もみとめた。また、初代培養神経細胞の突起伸展は、Denosominを前処置したアストロサイトとの共培養、およびアストロサイトの培養メディウム上清の投与によっても促進された。さらに、Denosomin投与された単離培養アストロサイトは、細胞の増殖率が増加していた。これらの結果から、Denosominは脊髄損傷による運動機能障害を回復する新規薬剤候補となる可能性を明らかとした。さらに、Denosominによる神経細胞の突起伸展の作用機序の一つとして、Denosominによって刺激されたアストロサイト由来の液性因子が関与する可能性を示した。現在、Denosomin刺激された単離培養アストロサイトから分泌される、神経突起伸展作用をもつ液性因子の同定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
損傷脊髄領域でのアストロサイトは、一般に軸索の再生阻害要因と考えられているが、一方で炎症の収束や神経細胞の保護といった役割ももつと考えられており、その生理的役割は十分に解明されていない。Denosominは、アストロサイトの神経細胞に対する軸索再生の促進に有益な性質を強く顕在化させる作用をもつと考えられる。この薬物によるアストロサイトの機能調節が直接的に神経細胞の軸索再生を促進させるという現象はこれまでにほとんど報告がなく、アストロサイトの未だ知られていない生理的役割の存在を示唆するとともに、脊髄損傷に対する新しい治療戦略の一つとなる可能性を示唆していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Denosomin刺激によって分泌されるアストロサイト由来の神経突起伸展作用をもつ液性因子の同定を試みている。現在、既知の神経栄養因子でない分泌因子の一つを候補として同定している。この分泌因子の神経突起の伸展作用について、動物実験・培養実験の双方で検討をおこなっている。
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