2010 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性神経細胞死における神経特異的ミトコンドリアの病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
22790256
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 助教 (60549913)
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Keywords | 脳・神経疾患 / シグナル伝達 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
脳卒中における病態の形成と回復の過程において,ミトコンドリアは重要な役割を担っている.一方,ミトコンドリア内に存在する転写制御因子はミトコンドリアの活性を調節する事が知られているが,それら分子がミトコンドリアに輸送されるメカニズムやミトコンドリアにおける機能は不明である.申請者は神経栄養因子PACAPの暴露がPgc-1の発現をミトコンドリアから核へと変化させ.インビトロ虚血による神経障害が,ミトコンドリア内におけるcFos発現を増強する事を見出している.そこで,本研究では,それら転写制御因子のミトコンドリアを起点とした情報伝達機構の体系を確立するとともに,脳卒中に対する新規薬物ターゲットを見出す. 2004年にLinらによりPgc-1αKOマウスの海馬神経細胞は,成熟に伴う神経突起の伸張が抑制されることが報告されている.Pgc-1αは種々の細胞においてミトコンドリアの電子伝達系に関与するタンパク質の発現誘導を介して,ミトコンドリアの活性化に寄与することから,PACAP暴露後の細胞におけるシトクロムCおよびシトクロムC酸化酵素サブユニット4の発現量を比較すると,PACAP暴露群においていずれの分子も有意に発現増強していた.さらに,ミトコンドリア活性の指標としてJC1の蛍光強度を比較すると,PACAP暴露群において優位な蛍光強度の増強が見られた.神経突起形成におけるミトコンドリア活性化の重要性を検討する目的で,PACAP暴露30分前から呼吸鎖複合体1の阻害剤であるロテノンおよび脱共役剤であるCCCPを暴露した後,神経突起の形成を測定すると有意に形成が抑制されていることが解った.以上の結果より,PACAPによる神経突起の形成過程にはミトコンドリアの活性化が重要な役割を果たしているが,これはミトコンドリアから核へのPgc-1αの細胞内輸送によって仲介されている可能性が推察される.
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