2011 Fiscal Year Annual Research Report
非環式レチノイドによる肝臓癌特異的細胞死の経路解析に基づく新規抗癌剤の開発
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22790266
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
辰川 英樹 独立行政法人理化学研究所, 分子リガンド生物研究チーム, 特別研究員 (10565253)
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Keywords | 非環式レチノイド / 抗癌剤 / 肝癌細胞 / リン酸化 / レチノイド核内受容体 |
Research Abstract |
1.非環式レチノイドの標的タンパク質の同定・性質決定 癌細胞選択的な細胞死誘導作用を示す非環式レチノイドの標的タンパク質を同定するため、非環式レチノイドを結合させたビーズと肝癌細胞抽出液とをインキュベーションした後に、結合したタンパク質を溶出、電気泳動、CBB染色した。非環式レチノイドを結合していないビーズに結合したタンパク質と比較して、優位に増加するタンパク質について質量分析を行ったところ、ペルオキシレドキシン4、eIF5Aなどが非環式レチノイド結合タンパク質の候補として同定された。また、従来の結果から、非環式レチノイドの標的タンパク質の候補として予想されていたRasタンパク質も非環式レチノイド結合ビーズに結合することを、結合タンパク質のウエスタンブロットにより確認した。今後はこれらの候補タンパク質の非環式レチノイドによる癌細胞選択的細胞死誘導における役割について、発現ベクターやsiRNAを用いて検討していく予定である。 2.RXRのリン酸化阻害物質の探索 昨年度に作製したRXRαの82番目のスレオニンと260番目のセリンのリン酸化部位を認識するポリクローナル抗体について評価を行った。同抗体を用いて肝癌細胞及び正常肝細胞の免疫染色及びこれらの細胞抽出液を用いたウエスタンブロット解析を行ったところ、肝癌細胞選択的にリン酸化RXRαの染色シグナルやバンドが確認され、肝癌細胞では非環式レチノイド処理により染色シグナルの低下が確認された。ジメチルニトロサミン投与ラット肝発癌モデルから得られた肝切片の染色実験では、非癌部に比べ、癌部選択的にリン酸化RXRα抗体による染色像が確認された。研究計画では、同抗体を用いてRXRαのリン酸化を阻害する化合物をスクリーニングしていく予定であったが、得られた抗体量が十分でなかったため、同抗体を用いた様々な癌やRXRαの機能障害が予想される病変の染色実験に予定を変更した。来年度は抗体を再度作製し、RXRαのリン酸化を抑制する化合物のスクリーニング系を構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非環式レチノイド結合ビーズを用いて非環式レチノイドの標的候補タンパク質を同定したが、候補タンパク質の機能解析までには至らなかった。また、RXRαのリン酸化を認識するポリクローナルの評価を細胞・組織レベルで行った。しかしながら、RXRαのリン酸化を阻害する化合物のスクリーニングを行うほどには、抗体量が十分でないため、実験計画を一部変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
RXRαのリン酸化を阻害する化合物のスクリーニングを完了させるには十分な抗体量が得られなかったため、実験計画の変更を行った。同抗体を用いて様々な癌及びRXRαの機能不全に関わる病理組織を染色することにより、RXRαのリン酸化と病態形成との関係性を明らかにすることができると考えられる。来年度はスクリーニングに十分な量の抗体を再度作製し、RXRαのリン酸化を抑制する化合物のスクリーニング系を構築する予定である。
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Research Products
(5 results)