2010 Fiscal Year Annual Research Report
含セレン蛋白質合成破綻による神経変性疾患モデルマウスの創出
Project/Area Number |
22790268
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 隆史 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (70508308)
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Keywords | 含セレン蛋白質 / SeCys-tRNA / 酸化ストレス / 抗酸化酵素 / Nrf2 / 神経変性 |
Research Abstract |
高齢化社会を迎えつつある我が国では社会的にも医療面でも多くの課題を抱えている。特に、老化に伴い発症頻度が増す神経変性疾患であるアルツハイマー病やパーキンソン病などの原因究明と治療法開発が急務である。こうした神経疾患の原因として、活性酸素種との関わりに注目が集まっている。グルタチオンペルオキシダーゼやチオレドキシン還元酵素を含む含セレン蛋白質群は活性中心にセレノシステイン(SeCys)の形でセレンを含む酵素群であり、抗酸化酵素の中心的役割を担う。この含セレン蛋白質群の合成にはSeCys-tRNAが必須であり、このtRNA欠損は含セレン蛋白質合成が破綻し抗酸化機能低下を引き起こす。本研究では、神経変性疾患の予防と発症メカニズムの理解を最終目的とする。本年度では、まず神経特異的SeCys-tRNA遺伝子破壊マウスを作成し神経変性疾患モデルマウス創出を試みた。その結果、作製されたマウスは生後体重増加が観察されず運動失調が観察され生後3週以内に致死に至った。ウエスタンブロット解析により、このマウスの脳組織において含セレン蛋白質GPx1の発現が著しく低下していることを確認した。また、転写因子Nrf2の蓄積およびその標的遺伝子の活性化が観察されたことから、酸化ストレス応答系Keap1-Nrf2システムによる代償機構の存在が予想された。以上の研究成果は、含セレン蛋白質群が神経組織において恒常性維持に必須な防御機構であり、またその防御機構の破綻状態に対してKeap1-Nrf2システムが保護的に働いていることを示唆する。すなわち、セレン欠乏予防やNrf2誘導剤の摂取が酸化ストレスに起因する神経変性疾患の予防に有効であることを支持する。
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Research Products
(4 results)