2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞を用いた骨格筋前駆細胞誘導と筋ジストロフィー治療への応用
Project/Area Number |
22790284
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 英俊 京都大学, iPS細胞研究所, 講師 (80528745)
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Keywords | iPS細胞 / 骨格筋前駆細胞 / 分化誘導 / 筋ジストロフィーモデル |
Research Abstract |
昨年度より引き続き、ヒトiPS細胞からの骨格筋前駆細胞誘導研究を行った。マウスと同じくPDGFRa陽性細胞が沿軸中胚葉の前駆細胞であることを明らかにしたが、マウス細胞とは異なり、骨格筋へ分化する細胞はごく僅かであった。またこれまでヒトES細胞にて報告されているCD73にて細胞を純化する方法や、Activin阻害剤を用いる方法など、他の分化誘導法もいくつか試みたが、やはり骨格筋へ分化する細胞はごく僅かであった。 そこで、ヒトiPS細胞にテトラサイクリン応答性MyoD1発現ベクターを遺伝子導入することにより、効率の良い骨格筋分化誘導法の確立を目指した。これまで、未分化ヒトiPS細胞への遺伝子導入は効率の悪いものが多く、あまり成功していなかったが、我々はpiggyBacと呼ばれるトランスポゾン・ベクターを用いることで遺伝子導入を容易にし、テトラサイクリン添加により60%以上の高い効率で、わずか2週間程度で、骨格筋前駆細胞を分化誘導する方法を開発した。誘導された骨格筋は遺伝子発現レベルにおいて、成熟骨格筋細胞と同等の発現を示し、CK-MやDystrophinといった成熟骨格筋マーカー蛋白も発現していた。さらにこの誘導骨格筋細胞は、電気刺激により収縮することも観察し、機能を持った細胞であることが明らかとなった。この誘導法の分化途中の細胞を筋ジストロフィーモデルの免疫不全マウスに移植すると、ヒト由来のDystrophinの発現を確認したことから、生体内で骨格筋再生に寄与する事が明らかとなった。またこの方法は、異なる細胞クローンにおいてもほぼ同様の高効率で誘導可能であることが分かり、再現性も極めて高いと言える。 これまで、ヒトiPS細胞からこれだけの効率で、機能を持った骨格筋細胞を誘導した例はなく、今後の細胞移植治療の開発や、筋疾患モデルの研究に大いに有用である。
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