2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790285
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沖田 圭介 京都大学, iPS細胞研究所, 講師 (90512434)
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Keywords | 再生医療 / 初期化 |
Research Abstract |
ヒトやマウス線維芽細胞に、4つの遺伝子(Oct3/4,Sox2、Klf4およびc-Myc)を導入することによって、胚性幹(ES)細胞様の人工多能性幹(iPS)細胞が作製できることが報告されている(Cell,126,663-676,2006,Cell,131,861-872,2007)。ヒトiPS細胞は創薬や疾患研究、細胞移植治療への応用が期待されている。しかし最近の研究から、iPS細胞とES細胞の遺伝子発現やエピジェネティック状態の相違点も明らかとなっており、iPS細胞の初期化が必ずしも十分ではないことが分かってきた(Cell Stem Cell 5,111-123,2009)。また、iPS細胞の作製効率は非常に低く、4つの遺伝子が導入された大多数の体細胞では初期化が起こらないことが問題となっていた。この問題を解決するため本研究の開始後、国内外の研究室からiPS細胞の樹立効率を改善する様々な因子が報告されている。例えば、申請者はホンらと共に初期化過程においてp53-p21経路を抑制することでiPS細胞の樹立が高まることを示した(Nature460,1132-1135(2009))。また、中川らと共にc-Mycの代わりにL-Mycを使用することでiPS細胞の作製効率および質が上昇することを示している(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107,14152-14157(2010))。申請者はこれらの知見を組み合わせることで、ヒトiPS細胞を従来よりも効率よく樹立することに成功し、Nature Methods誌にて発表した(Nature Methods,2011)。岐阜大学の協力により、HLA型がホモの歯髄幹細胞からもiPS細胞の樹立を達成した。このiPS細胞は分化多能性を持ちin vivoの分化誘導法によりドーパミン作動性神経細胞(京大、高橋淳ら)あるいは網膜色素上皮細胞(理研、高橋政代ら)へと分化した。また、導入した外来因子が染色体内中に残存していないiPS細胞を得ることもできている。これらの結果は、今回開発したiPS細胞樹立方法が将来の細胞移植治療に用いるiPS細胞作製法の一つとなりうることを示している。さらに新たに開発したこの方法は、プラスミドDNAを用いるものであり、ウイルスを使わないことから実験室での取り扱いが容易である。すでに非営利団体Addgeneを通して世界の100を超える研究室に分配されており、世界的なiPS細胞研究の発展に貢献するものと期待される。
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