2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790287
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 拓也 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (60546993)
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Keywords | 再生医療 / 遺伝子発現 / 多能性幹細胞 |
Research Abstract |
体細胞にごく少数の遺伝子を導入することで得られるiPS細胞は、多能性幹細胞であるES細胞とほぼ同等の性質を持つ。iPS細胞の技術を用いた再生医療は大いに期待されるの一方、応用へ向けた大きな課題の一つとして、高品質なiPS細胞を安定的に樹立する必要がある。そのためには、樹立されたiPS細胞の分化能や癌化リスクを高精度で評価する方法の確立が必要である。本研究では、性質の異なるiPS細胞の遺伝子発現解析を単一細胞レベルで行うことによって、iPS細胞の新たな評価方法の開発を行い、安定的に高品質なiPS細胞の樹立に貢献することを目的とした。昨年度確立した手法により、本年度は、種々のiPS細胞株における遺伝子発現を単一細胞レベルで調べた。多くの多能性マーカーの遺伝子発現は単一のiPS細胞株内で大きく変動しており、同一の細胞株内であっても細胞内の状態はダイナミックに変化していることが、どのような細胞株でも起こっていることを明らかにした。この遺伝子発現のゆらぎは、キメラマウスを作り、生殖系列細胞へも移行する高品質なiPS細胞とキメラマウスを作らない低品質なiPS細胞の間で変化が見られなかった。また、私が独自に同定したiPS細胞特異的なスプライシングパターンについても単一細胞解析を行なった。結果、同一の遺伝子から選択的スプライシングによって生み出される2つの転写産物の発現量の比は、多くの場合単一細胞レベルで変化が見られなかったが、一部の転写産物の比は同一の細胞株内であっても大きく変動することが明らかとなった。このことは、選択的スプライシングも遺伝子発現と同様に細胞間でゆらぎ、細胞内の状態をその都度ダイナミックに変化させる要因となっていることを示唆する。
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