2010 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムイオン結合性小胞体タンパク質カルミンの生理的役割の解明
Project/Area Number |
22790288
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 伸一郎 京都大学, 薬学研究科, 助教 (10542102)
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Keywords | 極性細胞 / 脂質輸送 |
Research Abstract |
申請者の所属教室で発見されたcaluminは1本の膜貫通セグメントを有する小胞体膜タンパク質であるが、その詳細な生理機能は不明である。Calumin欠損マウスはE10.5-11.5で胎生致死となり、卵黄嚢において顕著な血管形成異常がみとめられた。本申請研究においては、caluminの生理機能の解明を目指し検討を行った。 Calumin欠損マウスにおいては血管形成異常が認められたことから大阪大学微生物研究所の高倉伸幸教授との共同研究のもとマウス胎児のP-Sp領域を用いたex vivo血管形成能評価および卵黄嚢における血管形成因子の発現を観察したところ野生型とcalumin欠損間で違いが認められなかった。そこで卵黄嚢におけるcaluminの発現を観察したところ内胚葉細胞に特異的に発現してことが明らかになった。卵黄嚢における内胚葉細胞は外部環境に面する頂端膜側から養分を取り込み、基底膜側にてその養分を放出する極性細胞として知られている。内胚葉細胞を介して輸送された養分は胎児の生育に必須の役割を果たしている。興味深いことにcaluminは内胚葉細胞の基底膜側に発現している。そこで内胚葉細胞における養分の輸送について観察を行ったところ、calumin欠損内胚葉細胞において基底膜側に顕著な脂肪滴の貯留が認められ、脂質輸送能が欠落していることが分かった。 これまで栄養輸送にかかわる分子の欠損マウスにおいて本研究と同様に卵黄嚢の内胚葉細胞における機能異常が認められ、同時期に胎生致死することが多数報告されている。Calumin欠損マウスは顕著な血管形成異常がみとめられたが、今回の研究結果から栄養輸送能の欠落を起因として二次的に血管形成の異常が引き起こされていることが考えられる。今後はcaluminと脂質輸送に着目し、その重要性を提示し、最終的には極性細胞における普遍性を明らかにしたい。
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