2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗炎症脂質N-アシルエタノールアミンを代謝するリソソーム酵素の解析
Project/Area Number |
22790295
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
坪井 一人 香川大学, 医学部, 助教 (80346642)
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Keywords | 脂質 / 酵素 / 生理活性 / 生体分子 |
Research Abstract |
N-アシルエタノールアミン(NAE)は動物組織中に存在して抗炎症や鎮痛などの生物活性を示す脂質メディエーターであるが,その生合成や分解に関しては不明な点が多い。本研究課題において平成22年度は,これらの代謝反応に関わる酵素群に着目して以下の成果を得た。NAEの生合成の律速段階は,生体膜に存在するグリセロリン脂質であるホスファチジルエタノールアミン(PE)が転移反応によりN-アシル化される反応であると推定される。このPE N-アシル転移活性を持つ酵素として,癌抑制遺伝子群であるHRASLSファミリーに属するHRASLS-1を見出し,そのリン脂質代謝活性の面から機能解析を行った。すなわち,ホスファチジルコリン(PC)のアシル基をPEのアミノ基に転移するアシルCoA非依存性のPE N-アシル転移活性を本酵素に認めた。加えて,リゾPCの水酸基にPCのアシル基を転移するO-アシル転移活性も確認した。また,PCおよびPEから脂肪酸を遊離させるホスホリパーゼA_1およびA_2活性がCa^<2+>非依存的に検出され,前者の活性が後者の活性よりも優位であった。ヒト組織におけるmRNA発現の分布を検討したところ,精巣および骨格筋で強く発現していた。またHRASLSファミリーは,ビタミンAの体内動態に関わるレシチン・レチノール・アシル転移酵素(LRAT)に相同性を示すことから,LRATと同様のレチニルエステル生成活性を有するか否か検討したが,本活性は検出されなかった。以上の結果から,HRASLS-1がグリセロリン脂質代謝活性を有する酵素であることが明らかとなり,NAEの生合成に関わる可能性が示唆された。加えて,NAEの分解を触媒するNAE水解酸性アミダーゼの既知アイソフォームを活性化する機構に関して興味深い予備的知見が得られ,引き続き解析を進めている。
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Research Products
(11 results)