2011 Fiscal Year Annual Research Report
DNA障害応答系によるヒト造血幹細胞維持機構の解明
Project/Area Number |
22790299
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 講師 (10398753)
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Keywords | 造血幹細胞 / 移植 / 酸化ストレス / DNA障害 / 再生医療 / ヒト化モデル動物 |
Research Abstract |
これまで研究代表者らは、造血幹細胞(HSC)が移植ストレスにより、早期老化状態に陥るため、その造血能力が著しく低下することを明らかにしてきた。すなわち、平常時は酸素分圧が低い状態でhypoxia-inducible factor-1(HIF-1)依存的に幹細胞活性を維持しているHSCにとって、骨髄移植の前処置による造血環境の破壊と急激な増殖反応をともなう再生反応は、強い酸化ストレスを誘導するものである。この結果、HSC内の活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)レベルが急激に上昇し、酸化的DNA障害が誘導されることが原因となって、多くのHSCが早期老化によってその能力を失ってしまうことを見いだした。すなわち、自己複製能を有する幹細胞といえどもその活性は経時的に低下していくことが明らかとなり、あらゆる臓器を対象とした再生医療の実現化に向けての大きな障害となる。本年度はこの酸化的DNA障害の臨床的意義を明確にするために、30~50歳の患者に臍帯血移植を施行後半年から2年間経過した骨髄細胞からHSCを回収し解析したところ、同年代の健常人や高齢者(70~85歳)由来HSCに比べて、幹細胞数の低下、酸化的DNA障害の蓄積、骨髄再生能の低下が著しいことを見いだした。すなわち、0歳児のHSCにもかかわらず、移植後のわずかな期間でその幹細胞活性が著しく低下していることを明らかにした。このことは、移植患者が再発した場合に化学療法に対する造血障害が強く引き起こされる原因となっていると考えられる。また、本年度の米国血液学会においても同様の現象が複数の施設で報告され、幹細胞移植における克服すべき課題となっている。したがって、本研究計画は、再生医療における新しいコンセプトを提供するものであり、造血系のみならず再生医療の適応拡大に貢献するものである。
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