2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規リゾリン脂質が制御する神経回路形成及び神経回路再生の分子機構の解明
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22790302
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森 達也 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, 研究員 (70469922)
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Keywords | 軸索ガイダンス / リゾリン脂質 / GPCR / Gタンパク質 |
Research Abstract |
(1)Lyso-PtdGlc受容体の探索…RT-PCR法により同定したLyso-PtdGlc受容体候補遺伝子を安定発現する細胞株を用いてLyso-PtdGlcへの応答性を検証した結果、カルシウム及びMAPキナーゼの活性化は認められなかった。そこで、東北大学との共同研究により、様々なオーファンGタンパク質共役型受容体の発現スクリーニング法を用いて、新たにLyso-PtdGlc受容体の探索を行った。具体的には、様々なオーファン受容体発現する株化細胞にLyso-PtdGlcを添加し、刺激依存的に培養液中に分泌されるタンパク質を生化学的に解析し、受容体のLyso-PtdGlcに対する応答性を検証した。その結果、一つの受容体を発現する細胞株でLyso-PtdGlc依存的にタンパク質の分泌が有意に促進され、Lyso-PtdGlc受容体であることが示唆された。 (2)Lyso-PtdGlc受容体下流シグナル経路の解析…上記の実験により同定したLysoPtdGlc受容体下流シグナルの解析として、上記の分泌タンパク質量を指標として受容体にカップリングするGαサブユニットの同定を試みた。手法として、様々なGαサブユニットと分泌タンパク質の経路を活性化するGqサブユニットとのキメラタンパク質を発現する株化細胞に同定したGPCRを発現させ、Lyso-PtdGlcの添加によるタンパク質分泌を生化学的に解析した。その結果、Gα12/13-Gαqキメラタンパク質を発現する株化細胞においてタンパク質分泌が有意に促進された。これまでニワトリDRG神経細胞に対するLyso-PtdGlcによる軸索反発はGαiに依存することを示唆するデータを得ているが、今回の実験で新たなGαサブタイプの関与が示唆され今後更なる検証を続けていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新規リゾリン脂質に対する受容体を同定することを最大の目的としており、新たなアッセイ系を用いて新規リゾリン脂質に応答する受容体を同定することができたため研究は概ね順調に進展している。また、受容体下流のシグナル伝達経路についても受容体に共役する新たなGαサブユニットが存在することを示唆するデータも得られたため進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したLyso-PtdGlc受容体について、ノックアウトマウスを用いた解析を行う。具体的には、受容体ノックアウトマウスから回収したDRG神経細胞を用いてLyso-PtdGlcによる軸索ガイダンスアッセイを行い、Lyso-PtdGlcが誘導する軸索反発シグナルにおける受容体の関与を解析する。また、ノックアウトマウスの神経回路を免疫組織学的に解析し、In vivoの軸索ガイダンスにおけるLyso-PtdGlc及び受容体の機能を明らかにする。同時に受容体の発現分布についても免疫組織学的手法により解析する。 Lyso-PtdGlcによる軸索反発の細胞内シグナルについても、Gαサブユニットの機能阻害ペプチドを用いてニワトリDRG神経細胞においてLyso-PtdGlc受容体に共役するGαサブユニットを詳細に検証する。また、これまでにカルシウムイオン経路の関与を示唆するデータを得ているため、カルシウムイオンの流入源や関与するカルシウム結合タンパク質について薬理阻害剤を用いた軸索ガイダンスアッセイにより検証する。
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